最新記事
自己啓発

5歳の子どもは後悔しないが、7歳は後悔する...知られざる「後悔」という感情の正体とは?

2023年12月7日(木)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
後悔しない子供

写真はイメージです Ekaterina Mamontova M2K-shotterstock

<後悔はどのように起こるのか。後悔しない人間とはどんな人たちか。最新の学術研究と大規模な調査プロジェクトを基に、後悔のプロセスに迫る>

仕事、学業、恋愛、結婚......たいていの人は、人生のさまざまな局面で後悔をする。「あの時、ああしていれば――」そんなふうに思った経験がない人は、まずいないだろう。

だが「後悔」という感情の正体は、実はあまり知られていない。後悔する動物は人間だけなのか。後悔しない人間がいるとしたら、どんな人たちなのか。後悔は一体どのように起こるのか。

世界のトップ経営思想家を選ぶ「Thinker50」の常連であるダニエル・ピンクが、人間だれしもがもつ「後悔」という感情に立ち向かった。

最新の学術研究と、ピンクが自ら実施した大規模な調査プロジェクトから分かったのは、後悔とはきわめて健全で、欠かせないものであること。後悔とうまく付き合えば、よりよい人生を送る手助けになると説くピンクの著書は話題を呼び、世界42カ国でベストセラー入りしている。

regretbook20231206_cover175.jpg

このたび刊行された日本版『The power of regret 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)から一部を抜粋・再編集して掲載する(この記事は抜粋第2回)。

※抜粋第1回:17歳で出産、育児放棄...25歳で結婚、夫が蒸発...「後悔なんてしない」「過去は振り返らない」は間違い
※抜粋第3回:悲しみ、恥、恐怖、嫌悪感、後悔...負の感情が人生に不可欠な理由と、ポジティブな「後悔」の仕方

◇ ◇ ◇

「タイムトラベル」と「ストーリーテリング」

人が後悔を感じるプロセスは、人間の精神だけに備わっている二種類の能力とともに始まる。ひとつは、脳内で過去と未来を訪ねる能力、そしてもうひとつは、実際に起きていないことをストーリーとして語る能力である。

私たち人間は、熟練のタイムトラベラーであり、有能なストーリーテラーでもあるのだ。この二つの能力が絡み合い、言ってみれば精神の二重らせん構造をつくり出し、それが後悔という感情に生命を吹き込んでいる。

たとえば、次のような後悔を打ち明けた人がいる。これは、「ワールド後悔サーベイ」に寄せられた何千もの体験談のひとつだ。


大学院の学位を取得すればよかったと思っています。当時の私は父親の願望を受け入れて、大学院を中退してしまったのです。学位を取得していれば、私の人生の軌跡は違うものになっていたでしょう。もっと満足感と充実感、そして達成感を味わえたはずです。

このバージニア州の五二歳の女性は、短い言葉のなかで素早く頭を回転させている。彼女は自分の現状に満足できず、脳内で過去に立ち戻った。何十年も前、まだ若かった頃に、学業と職業の進路を検討していた日々にタイムトラベルしたのだ。

そして、実際に起きたこと(父親の望みに従ったこと)をなかったことにし、それとは別のシナリオを思い描いた。そのシナリオでは、父親の望みではなく自分の望みを尊重して大学院で学ぶことを決める。

そのあと、再びタイムマシンに乗り、現在へ一足飛びで戻る。ただし、過去をつくり変えたので、今回経験する現在は、ほんの少し前にタイムマシンで過去へ旅立つ前とはまるで違うものになっている。この新しい世界では、満足感と充実感と達成感を味わえるのだ。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 5
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中