肉体を鍛えるアスリートのように「脳」も鍛えられる...AI時代に重要となるブレイン・ワークアウトとは?
重要なのは、読書モードとデジタルモードの役割を理解して、切り替えること。読書モードとデジタルモードの切り替えを「バイリテラシー脳」と呼びます。2つのモードを意識的に使い分けることで、質の高いインプットと効率的なアウトプットを両立できる。たとえば、生成AIを「セカンドブレイン(第2の脳)」として使えば、私たちの脳の短期記憶と長期記憶の限界を突破して、知的生産を効率化できます。
──ブレインモードの使い方の優先度に迷ったときの対処法はありますか?
生物としての古い脳の働きを優先するとよいでしょう。運動と睡眠は最優先で、その後に瞑想して、少数の人との対話の時間をしっかりとる。次に読書の時間を確保して、最後にデジタルデバイスでアウトプットするという具合です。
ただし、デジタルモードもうまく活用すべきだと思います。私の実践例でいうと、NHKの「100分de名著」のデジタルアーカイブを併用して古典にふれることで、難しい古典の読書も効率的に行っています。フライヤーのようなネットのサービスで要旨を理解した後に紙の本を購入して深く読み込む、SNSやZoomをうまく活用して、世界中の仲間と対話をする、デジタルデバイスで運動・睡眠モードの状態をモニターするなど、デジタルモードをうまく活用して他のモードの効率と効果を高めることは可能です。
『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』
著者:メアリアン・ウルフ
翻訳:太田直子
出版社:インターシフト
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生成AIに頼りすぎると、「身体知」を学ぶ機会が喪失する?
──ブレイン・ワークアウトがAIと共存する時代において重要になる理由は何でしょうか。
ネットが普及する前の仕事風景を思い出すと、手書きで思考整理をするのが普通でした。ですが、過去の英知や論理的思考力の結果を簡単に得られるようになると、それらに頼って、手を動かすことが減っていく。すると、プロフェッショナルたちが知の探究に向けて行ってきた「身体知」を学ぶ機会がなくなる恐れがあります。しかも、生成AIが究極的なのは、人間が「考えなくなる」という状況にまで至らせる可能性がある点です。
デジタル化によって情報の選択肢が広がり多様性が増したといわれますが、そうではなく、むしろ単一の解を求めて答え合わせに走るのではないか、と思います。ネットやAIを利用してすぐに最適解を探すようになり、拡散ではなく収斂に走ってしまうのです。入社式を例にとると、1980年代はみんな多種多様なスーツを着ていますが、今はほぼダーク系のスーツで画一化されていますよね。