肉体を鍛えるアスリートのように「脳」も鍛えられる...AI時代に重要となるブレイン・ワークアウトとは?

2023年11月9日(木)19時33分
flier編集部

東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員の安川新一郎氏

『BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト』筆者の安川新一郎氏(本人提供)

深い思考のためには、「バイリテラシー脳」を育てよ

──本書で驚いたのが、私たちはデジタルツールを際限なく利用することで、デジタルモードに偏ってしまい深い思考ができなくなっているという点でした。この点について詳しく聞かせてください。

デジタルツールは知的生産を効率化してくれるので、活用していくべきです。ただし、注意力(アテンション)を奪うというリスクに気をつけないといけません。たとえば、スマホは目に入るだけで気を散らせるので、スマホを使わない時、眠る時は別室に置いたほうがいいといわれるほどです。

私たちの脳は、狩猟民族だった頃、あらゆる危険にすぐさま対応できるよう刺激に対して集中し、かつ同時に意識を分散させてきました。ですが、刺激が多すぎる現代ではそれが集中力を失わせる原因になっています。また、通知がくるたびに、色んな画面をどんどん切り替えてそれらに反応しているほうが、一冊の本を読みきるために複雑な論理を追うよりもラクなんですね。

SNSでは、見たい情報だけが出てきて、極端な意見に流れてしまいがちですし、匿名性も相まって、特定の人をたたいたり陰謀論を信じたりしてしまう。こうして、自分の意見をもたずに、流れてくる情報に反応するだけで人の役に立った気になることを「スラッカー(怠け者)」と「アクティビズム(社会活動)」をかけあわせて「スラックティビズム」といいます。

しかも、デジタルツールは私たちを夢中にさせる力がある。そのため、ついデジタルモードに時間を多く割いて、スマホ中毒になりかねない。6つのブレインモードのバランスがいびつになっているのが現代なんです。

──こうした問題の解決策は何ですか?

デジタルモードに浸かっていると、読書モードに影響を与え、深い批判的思考ができにくくなってしまいます。これは、認知神経科学を専門とするメアリアン・ウルフがデジタルモードの「にじみ効果」と呼ぶものです。情報量が膨大になって負荷がかかると、情報の取り込みや長期記憶への貯蔵が難しくなって、結果として情報をざっと見る習慣がつき思考が浅くなってしまうのです。私自身、読書が好きなのに長い本を読みきるのが以前よりも難しくなっているように感じることがありましたが、この現象も「にじみ効果」の1つです。

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