なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

2023年10月26日(木)07時47分
flier編集部

私たちはAIが時に間違う場面も見ているので、AIが万能ではないとわかっています。だから、あくまで人が主体でAIはそれに従属するツールだと思える。ところが、次の世代の人たちは生まれたときから、親や先生よりも物知りでパフォーマンスの高いAIとつき合っていくわけです。すると、AIに考えてもらうほうがラクに正解にたどり着けるからと、AIに主導権をわたしてしまうのではないか――。生物の機能は使わないとどんどん退化するので、ヒトが思考しなくなるのは問題です。

AIの登場は、人間の理解を超えた「エイリアン」の来襲といえるかもしれません。もしもAIの存続を優先するようなプログラムがなされたら、私たちはAIのメンテナンスをするためだけの存在になる可能性があります。それを防ぐためにも、私たちは自身で考えることをやめずに、人間の存在や幸せとは何か、どんなことに時間を使うかをこれまで以上に考えなくてはいけないでしょう。死なないAIが登場することで、命が有限である私たち人間の存在とは何なのか、AIの登場前には思い至らなかった問いと向き合うようになったといえます。

分子生物学の研究へ進むきっかけをくれた一冊

──小林先生の人生観や研究に大きな影響を与えた本はありますか。

分子生物学の研究者をめざすようになった一番のきっかけになったのは、高校時代に読んだ『人間の終焉』という本です。著者は、戦後のDNA研究をリードしてきた渡辺格さん。生命現象の仕組みを分子レベルで解明する分子生物学の草分け的存在です。

1980年頃、ヒトが遺伝子にコードされているタンパク質によってつくられていることがわかり、DNAを全部読み解くと人間の設計図がわかるといわれていました。そうすれば人間とは何か、私たちのアイデンティティを生み出すものは何なのかも解明できるかもしれないと、非常に衝撃を受けました。ヒト同士の遺伝情報は0.1%くらいしか違わないのに、それだけで見た目も性格もこんなに違うわけでしょう? その0.1%がわかるのはすごく面白そうだし、早く研究しないといけないのでは、と切迫感に駆られたほどでした。

2003年にヒトゲノムプロジェクトで遺伝情報の解読が完了し、結局のところ設計図はわからなかった。ですが、『人間の終焉』は、分子生物学の研究へ進むきっかけをくれた大事な一冊です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、大手行にプライベートクレジット市場向け投融

ワールド

トランプ氏、原油・ガソリン高止まりの可能性示唆 中

ワールド

トランプ氏、イランへの限定的攻撃再開を検討 協議決

ワールド

ドル上昇、米イラン協議決裂で安全資産需要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中