なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

2023年10月26日(木)07時47分
flier編集部

アンチエイジングの最前線 「老化細胞」を取り除けるか

──小林先生は健康寿命を延ばすための研究をされています。健康寿命を延ばしたい方向けに、良い兆しとなる研究結果があれば教えてください。

老化の大きな原因の1つは、遺伝情報が書き込まれているDNAが傷ついて変異し、少しずつ壊れていくからだとわかってきました。大切な遺伝子に変異が起きると、がんや認知症の確率が上がってくるんですよ。現に70歳を超えると半分近くの人ががんを経験します。

皮膚のDNAを傷つける要因として紫外線があります。紫外線は日光に含まれているので、日に当たりやすい顔や手の甲は老化しやすい。反対に、背中や内臓は若い人もお年を召した人もあまり変わりません。寿命が延びると、その分DNAの傷が溜まるため、がんになる可能性も高まりますが、もしDNAの傷つく度合いをコントロールしたり、傷を治りやすくしたりする方法が見つかれば、健康寿命を延ばせるのではないかと日々研究中です。

1つ期待されているのが、老化細胞除去技術です。実は赤ちゃんも老化細胞をもっているのですが、うまく取り除いてくれる仕組みがあります。一方、年を取ってくると老化細胞が溜まっていき、悪さをする。そこで老化細胞を取り除こうとしています。マウスの実験はかなりうまくいっていて、老化細胞を取り除くとマウスが若返ったようになるんですね。これと同じことが、遠くない未来、ヒトでも可能になるかもしれません。

いずれにせよ、期待できるのは、がんになりにくくしたり健康寿命を延ばしたりする効果であって、寿命そのものが延びるわけではありません。人間の寿命は120歳くらいが限界といわれています。

「死なないAI」は、人類にどんな影響を及ぼすのか?

──昨今、ChatGPTのような対話型AIが爆発的に普及し、AIとの共存について考える機会が増えました。AIは人類の進化にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

まず、今後のテクノロジーの潮流は主に3つあると思っています。1つは不老不死の研究。2つめはAIの研究。そして3つめは宇宙空間の探検です。ここ最近はAIの分野が目覚ましい発展を遂げています。これは「AIに思考させて賢くなりたい」という欲望の現れといえるでしょう。人間は生物なので簡単には進化できませんが、コンピュータなら一気に進化できますから。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙

ビジネス

中国の乗用車販売、11月は前年比-8.5% 10カ

ビジネス

独10月鉱工業生産、予想上回る 景気回復はなお遠く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中