なぜヒトだけが老いるのか? 生物学者が提言する「幸福な老後の迎え方」

2023年10月26日(木)07時47分
flier編集部

231024fl_kab02.jpg

──シニアが幸せに生きていくために、社会はどんな後押しをするといいのでしょうか?

老後を迎えた人がシニアとしての役割を果たせていれば全く問題ありません。ただ、高齢社会が進む日本では、いまや5人に1人が70歳以上。多くの職場では定年制があるため、シニアが実力を発揮する機会が減っているのが問題だと考えています。再雇用されても、個人の意思とは関係なく、仕事内容や役割が変わってしまう場合もあります。

高度経済成長期には、若手に就労の機会を与えるために定年制が有効だった面があったかもしれません。ですが、縮小傾向が進む現在は、定年制は労働者不足を加速するだけでメリットがないように思います。経験やスキルを活かして働く人材は会社にとって貴重ですし、本人が働きたいのならそのまま働ける方が自然ですよね。

逆に、定年制があることで、「定年まで同じ会社で勤め上げよう」という発想になってしまう。定年がなければ、違う職業についたり、新しい会社を立ち上げたりするという発想も生まれやすい。年齢の縛りなく人材の流動性が高まれば、適材適所が進んで生産性も上がる。個人も自分なりのライフプランが立てられて、より幸せに生きられるでしょう。シニアが本来の価値を発揮するためには、社会の側も変わっていく必要があると思います。

幸せな老後のカギは「共感力」にある

──老年期に差しかかり、身体的にできないことが増えてショックを受け、不安を感じている方は、老後とどう向き合うとよいでしょうか。

人間は社会性の生き物なので、他者とのつながりのなかで暮らすほうが幸せを感じやすいものです。ヒトは集団生活で協力し合い、共感力を高めてきました。1人で美味しいものを食べるよりも、誰かと「美味しいね」と共有しながら食べるほうが、より美味しく感じられませんか。

また、何かしら仕事をしているほうが、やりがいを感じやすい。趣味のコミュニティに所属するのもいいでしょう。自分の好きなことと、さらには人のためになることを続けて、共感する機会を大事にすることをおすすめします。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中