中国では600万部突破──稲盛和夫の『生き方』が世界の人々の心を揺さぶった訳
2つめは「驚きのある企画」です。既視感のある企画ではつまらないですよね。本当に「ブランニュー」になっているか、今の時代にそれを出す価値があるかを考えます。ソフト産業なので、ある程度の失敗はつきものです。それでも、「ブランニュー」をつくろうじゃないかと考えてこそ、私たちの生きる意味も生まれるというものです。
3つめは、「世界に打って出る」ということです。これは経営者になる前、20年以上前から言い続けていることです。漫画やアニメは世界に受け入れられていますが、これは筋書きや技法だけが受け入れられているわけではなく、正直さや真面目さ、他者への思いやりなどの日本人のスピリットが求められているのだと思うのです。そうしたスピリットは、我々の活字の中にも織り込まれているはずです。だから、活字が売れないわけがない。そう言い続けてきました。
近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』は、世界で1300万部を超えています。川口俊和さんの『コーヒーが冷めないうちに』は日本国内ではシリーズ130万部突破、アメリカでもベストセラーになり、イギリスやイタリアでもロングセラーになっています。
小さな出版社からこうした例がたくさんあるのは、運がいいというのも確かです。でもやはり、単なる偶然とまでは言い切れないのではないかなと思います。本自体のエネルギーがあることが前提ですけれども、世界へ打って出ようという志がなければ、海は渡れなかったと思いますから。
──国内でのロングセラーやベストセラーだけでなく、世界への広がりを実現されているんですね。何か特別な取り組みをされているのでしょうか。
コロナ禍で今は中断してしまっているのですが、フランクフルトで行われている世界最大のブックフェアを全社員に経験してもらうようにしてきました。世界中から本に関わる人たちが集まって、ライツ(著作権)を売り買いする場なのですが、本を愛する人たちばかりが集まっていて、国境を越えた思いに胸が熱くなります。ブースのつくりも素晴らしくて、大変勉強になります。これを全員に体験してもらおうと、業績の良い年を中心に社員に順々に行ってもらうことにしました。帰りには他の都市によってもらったりもしましてね、それも良い経験です。
じつはサンマーク出版は、世界では知られた出版社なんですよ。向こうのブックフェアではサンマーク出版のブースも盛況で、たくさんの方がパンフレットを求めにいらっしゃいます。実際に行った社員からは、サンマーク出版が世界で注目されているのを肌で感じられた、いろんなブースで世界の本を見てこられて視野が広がったという話を聞いています。