最新記事
経営者

中国では600万部突破──稲盛和夫の『生き方』が世界の人々の心を揺さぶった訳

2023年4月5日(水)18時21分
flier編集部

私たちはそれを稲盛先生にアピールするためにやっていたわけではなく、それくらい本気で取り組むことが必要だと考えてやっていたことなんですけれども、不思議なことに稲盛先生のような一流の方ともなると、聞かなくてもわかるようなんです。私たちが、本気で準備していることが伝わって、ぜひそういう姿勢で取り組む人たちと仕事をしたいと言っていただき、いくつも順番を飛び越えて、私たちの企画をやっていただけました。

トップに立つような方は、目に見えないものが見える人なんだなと思わされました。それは経営の世界の話だけではなく、一流の人同士は、初対面でも長年の知り合いのようになめらかに対話をすることがありますよね。あれはきっと、目に見えないことが見えるという、共通の地下ケーブルのようなものが両者の間につながっているからなのではないかと。そんなことも、本づくりを通して学ばされたことの一つです。

──熱意が稲盛先生にも伝わったからこそ、この企画が実現したんですね。その熱意は時間も場所も越えて多くの読者にも伝わっているようです。

この本は2004年の刊行で、10年かけてミリオンセラーになった稀有な例です。それからも売れ続け、今では150万部に達しました。19年をかけ、本自体の成長を感じさせられます。読者の方からも、出版人冥利につきるようなご感想をいくつも頂戴しています。本には人の人生を変える力があると実感しますし、本づくりという代替できない仕事に関われることのありがたさを感じます。

『生き方』は世界16か国に翻訳されて、中国では600万部を突破しています。日本での盛和塾活動は終了となりましたが、中国では活動が継続しており、会員は2万人に達しているようです。欧米とは異なるかたちの資本主義のあり方を模索している今の中国で、ここまでの大きな支持を集めることには驚かされます。稲盛先生の心の火が、どこまでも広がって多くの人の人生を変えていこうとしているようです。

日本人のスピリットが織り込まれた活字が、世界で売れないわけがない

──サンマーク出版さんでは、『生き方』を含め、これまで8冊のミリオンセラーを出されていますね。小さな出版社としては異例の数ですが、本づくりで心がけていることを教えていただけますか。

3つ挙げるとしたら、第一は「本のエネルギー」です。編集者のエネルギーはもちろん、著者の「本然」、本来そこにあるものを凝縮して一つのエネルギーにして、それを人の心に吹き込んでいきたいと考えています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中