最新記事
SDGs

一歩進んだ環境対策 宅配ピザの紙箱を削減するスイス発のニュービジネス

2023年3月22日(水)20時25分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
リサイクル型のデリバリー容器に入ったピザ

200回以上の使用に耐えるというリサークル・ボックス・ピザの容器 SRF News

<フードデリバリーの利用増加とともに、使い捨ての包装容器を見直す動きも>

日本では、買い物のときにリユースの容器にデポジットを払い、後で返却する循環型ショッピングシステムの「ループ」がイオンなどで展開している。そのピザ版といえるサーキュラーエコノミー(循環型経済)のモデルがスイスで進んでいる。

スイスには多数のイタリア人が住み、イタリア料理店やピザ店が8200店以上もあり美味しいピザには事欠かない。そのためピザは人気で、国民の約83%が月に1回はピザを食べ、59%が「無人島に唯一もって行く食事はピザ」と答えたという調査結果もある。店内で食べるほかに、宅配やテイクアウトができる店も多い。それだけにスイスでは、推定で年間4000万個の宅配・テイクアウトのピザの箱が捨てられているという(reCIRCLE)。

紙より石油由来のプラスチックの箱がいい!?

宅配ピザの箱はチーズやソースで汚れやすいため、使い捨てにされる。スイス全国に広がる老舗の宅配ピザ店ディエチでは、エコ活動としてピザの箱に厚紙の中敷きを入れている。配達後、汚れていなければ中敷きは紙類の、箱はボール紙のリサイクルに出すことができる。しかし筆者がディエチを何度か利用したところ、中敷きと箱の両方が汚れていたことがあった。

「毎年捨てられるピザの箱4000万個は、積み重ねると高さ1600㎞になります。また、つなげると長さ1万3200kmになり、これはスイスの首都ベルンと米ニューヨークを往復した距離です」と話すのは、リサークル社CEOジャネット・モラートさんだ。

2015年設立の同社は、テイクアウトで使うパッケージを店に返却してもらって何度も使う(循環させる)システムをスイスで広めてきた。そして、昨年、店と客の間を循環させる紫色のピザの箱「リサークル・ボックス・ピザ」を開発した。

この箱はプラスチックとガラスビーズが材料で、1箱200回以上の使用に耐え得る。使用限度に達したり壊れたら、100%リサイクルして新しいピザの箱を作ることができる。宅配・テイクアウトのピザの箱には保温性とパリッとした食感を保つための通気性が求められるため、そういった面や価格も考慮して、生分解性の素材ではなく、プラスチックを選んだという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中