最新記事
SDGs

あなたの買い物のCO2排出量を可視化する

MAKING CARBON EMISSIONS VISIBLE

2023年3月22日(水)10時40分
岩井光子(ライター)

230321p32_DKM_01iro.jpg

買い物にひもづくCO2排出量を可視化するドコノミーの新サービスに期待が集まる COURTESY DOCONOMY

変わるアメリカの空気感

ここ数年、消費にひもづく環境負荷を算出するアプリの開発競争が激しい。世界の金融機関が早急な環境対策を迫られている証しでもある。ドコノミーの経営陣や幹部チームも、世界のフィンテックフェスや気候変動関連の国際会議に忙しい日々だ。

ここ半年ほどの間にもラスベガスのマネー20/20、シンガポールのフィンテックフェスティバル、エジプトの国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)と立て続けに登壇。クライメート・ウィークNYCではタイムズスクエアのデジタルサイネージに米国内で発生した二酸化炭素量を表示する啓発活動を行うなど、グリーン・フィンテックの先進企業として確かな存在感を示してきた。

顧客は昨秋まで35社だったが、今年に入ってすぐ70社に倍増しており、ドコノミー日本法人の藤井奈々マネジャーも手応えを感じている。もともと欧州の環境意識は高かったが、ここ数カ月はアメリカの動きが顕著だという。ドコノミーも急成長中の米新興フィンテックのプレイドと契約するなど、アメリカ進出を本格化させている。

藤井は上司からアメリカの変容ぶりを聞かされている。「1年前と全く空気感が違うと。ESG(環境・社会・企業統治)もやや人ごとだったのが、行政からの圧力やグリーンファイナンスのルール整備に押され、取り組まないと取り残されるという危機感を募らせている」。ちなみに日本はその1年前のアメリカと空気感が似ているそうだ。

行動経済学も活用して

これまで見えなかったCO2排出量を知るインパクトは確かに大きい。しかし、アルゴリズムが弾き出した数値だけで適切な削減行動を取るには、消費者側にも相応のリテラシーが必要ではないか?

「それは当然の疑問だと思います。自分の消費活動から割り出された排出量が高いのか低いのか、高ければ何をすればいいのか。今後はその判断を支援するサービスに力を入れたい」と藤井は言う。

2月下旬、ドコノミーは同じストックホルムに拠点を置くドリームズ・テクノロジーを買収した。行動経済学や心理学に基づき、金融ウェルビーイングを促進する商品開発をしてきたユニークなフィンテック企業だ。

同社が構築したお金と幸福度の関係性を追求した独自システムと、ドコノミーの環境負荷測定ツールによってサービスが拡充すれば、行動インサイトを適用した効果的なアドバイスが可能になる。数値の意味がより分かりやすい形で利用者に届く、というわけだ。目下、新サービスの準備が進んでいる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、11月はマイナス13.7

ワールド

ロシアのミサイル「ICBMでない」と西側当局者、情

ワールド

トルコ中銀、主要金利50%に据え置き 12月の利下

ワールド

レバノン、停戦案修正を要求 イスラエルの即時撤退と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中