DAOは「スマホ登場」以上のパラダイムシフト...ここまで騒がれるのには理由がある
── Fracton Ventures として注目しているDAOの事例はありますか。
鈴木 注目しているのは、MetaCartel Ventures(メタカルテルベンチャーズ)。投資の意思決定がすべてイーサリアムのパブリックブロックチェーン上でおこなわれる、ベンチャーキャピタルのDAOです。スタートアップに資金を提供し、株式あるいはトークンを受け取るようになっています。
面白いのが、各業界における最前線のプレイヤーたちの知見が集約されていることです。これまでVCは出資者からお金を預かり、増やして返さないといけないので、投資効率のよいスタートアップに出資するようになっていました。ですが、本来VCがめざすのはイノベーションの加速です。MetaCartel Venturesでは、ステークホルダーを分散化させることで、投資対効果の重圧がある意味薄まります。エンジェル投資家がチームを組むように、面白いスタートアップに専門的な知見を注ぎこみ、その成功確率を高めていきます。VCに個人主権の考え方を組み込むという、Web3の世界観にマッチしたDAOではないでしょうか。
民主主義、望むコミュニティのあり方が問われる
── DAOは参加者みんなで意思決定するという性質をもつため、直接民主主義がどこまで機能するかが問われるように思いました。DAOが普及することで社会や民主主義にどんな価値をもたらすのでしょうか。
赤澤 そうですね。直接民主主義的な意思決定がどれくらい機能するかは大きなチャレンジだととらえています。技術には鏡のような側面があります。たとえば人工知能(AI)が広がったことで、人の知能や学習のプロセスについて問い直すことになりました。
同様に、Web3やDAOの概念が登場したことで、民主主義とはいったい何なのかという問いが自分たちに向けられています。DAOが自由につくれるようになると、何をすれば儲かるかを自分でデザインできるようになる。すると、そもそもどういった経済やコミュニティのもとで生きていきたいのかと問いを向けられることになります。DAOの価値は、こういった今まで考えてなかった問いが広がることです。
国の統治や企業の統治とハレーションが起きることもありますが、自分はどう生きたいのかというディスカッションが起きることこそが価値だととらえています。投票制度についても一人一票以外のあり方も検討するチャンスが生まれるかもしれない。一番大切なのは対話が生まれること。そのなかで、市場経済とDAOがそれぞれうまくはまるところを見つけてカバーしていくと見ています。