最新記事

テクノロジー

DAOは「スマホ登場」以上のパラダイムシフト...ここまで騒がれるのには理由がある

2022年11月15日(火)17時10分
flier編集部

気候変動、ウクライナ支援。DAOの思わぬ可能性とは?

── 今後は株式会社とDAOが共存していくと思うのですが、DAOがより馴染む分野などはあるでしょうか。

赤澤 課題が解決するとその果実が広くいきわたるような領域です。たとえばSDGsで掲げられる気候変動、水不足の課題解決などと相性がいいですね。グローバルレベルで取り組むべき教育の改革といった領域も、ボトムアップであるDAOのほうが進めやすいといえます。

あとはエンタメ業界もDAOと相性がいい。推しのアーティストやクリエイターをみんなで盛り立てていくことができます。

亀井 地震や水害といった有事の際にも、DAOはすぐに世界中から支援金を集められます。具体例としては、ロシアによるウクライナへの侵攻を受けて発足した「ウクライナDAO」が、暗号通貨での資金調達に成功したケースがあります。そのほか、DAOの「中心がいない」という性質を利用して、国家的な不正を暴くといったジャーナリズムでも活用ができそうです。

どの技術も人間の倫理観が問われる

── 一方でDAOの抱える課題やリスクは何でしょうか。

鈴木 DAO内のルールで定義していないことが起きたときにどう対処するのかが不明瞭な点です。たとえば、DAOが解散する可能性があるのか、解散したら個人はどうやって資産を取り戻せるのか、その相談は誰にすればいいのか、といったことです。

自律分散の諸刃の剣といえますが、トラブルが起きた場合は個々人が対処しないといけません。自律的に考えて行動することに慣れている人はよいですが、大部分の人は何もかも自分で決めるよりも、ある程度指示がほしいと思うのではないでしょうか。この点はDAOが発展するなかで乗り越えるべき壁だと考えています。

赤澤 日本の法律上の課題として、現時点では換金性のあるトークンを用いる場合、DAOの立ち上げが難しい状況です。ですが、経済産業省が「Web3.0政策推進室」を設置しWeb3を推進すると表明しているので、DAOを設立・運営しやすい環境が整えられていくでしょう。

他の課題は、DAOのルールを実行するスマートコントラクト(取引における契約を自動化する仕組み)がオープン性を大事にしているために、どんな用途にも使える点です。たとえばテロリストがDAOを組織したら、武器や資金を世界中から集められてしまう。ブロックチェーンからお金の流れをたどれますが、中央集権的な存在が取り締まれるわけではないので、その流れを遮断できません。そうしたリスクを食い止める技術も必要かもしれません。いずれにせよ、技術を活用する人間の倫理観が問われます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中