DAOは「スマホ登場」以上のパラダイムシフト...ここまで騒がれるのには理由がある
気候変動、ウクライナ支援。DAOの思わぬ可能性とは?
── 今後は株式会社とDAOが共存していくと思うのですが、DAOがより馴染む分野などはあるでしょうか。
赤澤 課題が解決するとその果実が広くいきわたるような領域です。たとえばSDGsで掲げられる気候変動、水不足の課題解決などと相性がいいですね。グローバルレベルで取り組むべき教育の改革といった領域も、ボトムアップであるDAOのほうが進めやすいといえます。
あとはエンタメ業界もDAOと相性がいい。推しのアーティストやクリエイターをみんなで盛り立てていくことができます。
亀井 地震や水害といった有事の際にも、DAOはすぐに世界中から支援金を集められます。具体例としては、ロシアによるウクライナへの侵攻を受けて発足した「ウクライナDAO」が、暗号通貨での資金調達に成功したケースがあります。そのほか、DAOの「中心がいない」という性質を利用して、国家的な不正を暴くといったジャーナリズムでも活用ができそうです。
どの技術も人間の倫理観が問われる
── 一方でDAOの抱える課題やリスクは何でしょうか。
鈴木 DAO内のルールで定義していないことが起きたときにどう対処するのかが不明瞭な点です。たとえば、DAOが解散する可能性があるのか、解散したら個人はどうやって資産を取り戻せるのか、その相談は誰にすればいいのか、といったことです。
自律分散の諸刃の剣といえますが、トラブルが起きた場合は個々人が対処しないといけません。自律的に考えて行動することに慣れている人はよいですが、大部分の人は何もかも自分で決めるよりも、ある程度指示がほしいと思うのではないでしょうか。この点はDAOが発展するなかで乗り越えるべき壁だと考えています。
赤澤 日本の法律上の課題として、現時点では換金性のあるトークンを用いる場合、DAOの立ち上げが難しい状況です。ですが、経済産業省が「Web3.0政策推進室」を設置しWeb3を推進すると表明しているので、DAOを設立・運営しやすい環境が整えられていくでしょう。
他の課題は、DAOのルールを実行するスマートコントラクト(取引における契約を自動化する仕組み)がオープン性を大事にしているために、どんな用途にも使える点です。たとえばテロリストがDAOを組織したら、武器や資金を世界中から集められてしまう。ブロックチェーンからお金の流れをたどれますが、中央集権的な存在が取り締まれるわけではないので、その流れを遮断できません。そうしたリスクを食い止める技術も必要かもしれません。いずれにせよ、技術を活用する人間の倫理観が問われます。