最新記事

ビジネス

アイデアが次々と沸く会議と、空気が固まる会議の違いとはなにか

2022年10月7日(金)11時42分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ルネサンスに天才が何人も同時に生まれた訳

ルネサンスの画家たちは遠近法の原理を秘匿しておいて死ぬ直前に息子たちに教えてやったり、「ふん、あいつみたいなやり方では描くもんか」と芸術家同士で偉ぶったりはしませんでした。新しい芸術家や偉大な作品が登場するたびにフィレンツェ全体が盛り上がり、新しいアイデアが登場すると芸術家たちは猛烈に分析し、実験しながら自分のものにしていくのに必死でした。しかも、版画と印刷術まで発達してアイデアはヨーロッパ全域にどんどん広がっていきました。言ってみれば、思考の荷車が四方に走り出したのです。

その時代を生きていたすべての人たちは、つまりメディチみたいな商人であれ、コロンブスみたいな冒険家であれ、ルターみたいな宗教改革者であれ、みんな大きな森の中でつながっているように思えます。各自が競争するのではなく、誰もが爆発の要素として点在し、運動エネルギーを含んでいるみたいだとでも言おうか。それが互いにつながって吐き出されるシナジーは相当なもので、互いを妬むエネルギーや壁を築いた個人の持つエネルギーとは比べものになりません。

――今の韓国みたいに、互いを踏みつけにしなければ上昇できない構造では難しいですね。

――そのとおりです。競争はキャンバスから何歩か下がる勇気を奪ってしまいます。後ろに下がった瞬間、競争から押し出されるみたいな気がするから、みんな目の前の壁に執着してしまうのです。でも、一人でも多くの人が後ろに下がり、大きな視野に立って動いていけば、間違いなくよくなっていくでしょう。血のにじむような競争では長く持ちこたえることはできません。すべてのことには周期があるというのも、私が歴史から学んだ大きなアイデアです。

――ポジティブですね。

――ポジティブなことがもう一つあります。偉大な天才がルネサンス時代に同時多発的に生まれたのは、天才たちは必ずしも、神のお告げが突き刺さるように劇的に生まれるのではないという証拠になります。さまざまな要素が適切に組み合わされば、つまり、雰囲気がうまく醸し出されれば、人間の力量ははるかに生き生きと発揮されます。

森と森が出会い、流れがスムーズになり、土壌が全体的に肥沃になれば、そこには美しくて力強いものがいくらでも花開き、育むことができるのです。それはすなわち、後天的・環境的要因をうまく醸成して適切に教育することが創造性の発現に非常に重要だという意味です。雰囲気を作らなければなりません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 8
    三船敏郎から岡田准一へ――「デスゲーム」にまで宿る…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中