社会をよりよく変えるために「権力」を使おう──その前に3つの誤解とは?
POWER, FOR ALL
われわれの言うパワーとは、言葉による説得であれ力ずくであれ、他者の行動に影響を与えられる能力を指す。では、その能力は何によって決まるのか? 答えは驚くほどシンプルだ──相手に影響を及ぼすには、その人が大切に思っているリソースへのアクセス権を支配すればいい。
誰かに対してパワーを有したいなら、まずその人が大切に思うもの(1つの場合も、複数の場合もある)を手に入れる必要がある。人が必要性を感じたり、欲しいと思うものなら、何でもOK。お金やきれいな水、豊かな農地、家、高性能の車のように目に見えるものの場合もあれば、自尊感情や帰属意識、達成感といった心理的なものもあり得る。
あなたが提供できるもの──専門技能、体力、財力、業績、真面目な性格、人脈──がパワーを生み出してくれるのは、相手がそれを欲しがっている場合のみだ。
加えて、あなたの提供できるリソースが、相手が他の手段では手に入れにくいものである必要もある。あなたは貴重なリソースを提供できる特別な人? それとも、同じような人が大勢いる?
相手が大切に思うものは何か、それは他のルートでも入手可能か否か。これが分かれば、自分のパワーの大きさも分かる。
ただし、パワーバランスの全貌を理解するには、あなたが重視するリソースを相手が持っているか、そのリソースへのあなたのアクセス権が相手の支配下にあるか、という点も考慮する必要がある。
誰かに対するパワーの大小は、相手があなたにパワーを有しているか否かによって劇的に変わるのだ。
パワーは常に相対的な存在だ。ある状況下で相手があなたに対してパワーを有し、あなたも相手に対してパワーを有しているとしたら、2人は互いに頼り合っている。その場合、2人の関係のバランスが取れているか、つまり、両者のパワーが同程度に強いか(弱いか)を確認しよう。もしバランスが悪ければ、どちらかが相手により強く依存している。
どんな関係でも、2人のパワーバランスは4つの要素──それぞれが大切に思っているものと、それと引き換えに提供できるものの有無──によって決まる(図1)。
そして、パワーバランスを変えるための戦略も、「引き寄せ」「連携」「拡大」「撤退」の4つに分類できる。これらの戦略は古今東西あらゆる組織や人間関係、さらには国家間の関係まで、あらゆる場面で活用されている。
ここではダイヤモンド業界を例に取り、4つの戦略を順に見ていこう。