社会をよりよく変えるために「権力」を使おう──その前に3つの誤解とは?

POWER, FOR ALL

2022年7月6日(水)12時58分
ジュリー・バッティラーナ(ハーバード大学ビジネススクール教授)、ティチアナ・カシアロ(トロント大学ロットマン経営大学院教授)

われわれの言うパワーとは、言葉による説得であれ力ずくであれ、他者の行動に影響を与えられる能力を指す。では、その能力は何によって決まるのか? 答えは驚くほどシンプルだ──相手に影響を及ぼすには、その人が大切に思っているリソースへのアクセス権を支配すればいい。

誰かに対してパワーを有したいなら、まずその人が大切に思うもの(1つの場合も、複数の場合もある)を手に入れる必要がある。人が必要性を感じたり、欲しいと思うものなら、何でもOK。お金やきれいな水、豊かな農地、家、高性能の車のように目に見えるものの場合もあれば、自尊感情や帰属意識、達成感といった心理的なものもあり得る。

あなたが提供できるもの──専門技能、体力、財力、業績、真面目な性格、人脈──がパワーを生み出してくれるのは、相手がそれを欲しがっている場合のみだ。

加えて、あなたの提供できるリソースが、相手が他の手段では手に入れにくいものである必要もある。あなたは貴重なリソースを提供できる特別な人? それとも、同じような人が大勢いる?

相手が大切に思うものは何か、それは他のルートでも入手可能か否か。これが分かれば、自分のパワーの大きさも分かる。

ただし、パワーバランスの全貌を理解するには、あなたが重視するリソースを相手が持っているか、そのリソースへのあなたのアクセス権が相手の支配下にあるか、という点も考慮する必要がある。

誰かに対するパワーの大小は、相手があなたにパワーを有しているか否かによって劇的に変わるのだ。

パワーは常に相対的な存在だ。ある状況下で相手があなたに対してパワーを有し、あなたも相手に対してパワーを有しているとしたら、2人は互いに頼り合っている。その場合、2人の関係のバランスが取れているか、つまり、両者のパワーが同程度に強いか(弱いか)を確認しよう。もしバランスが悪ければ、どちらかが相手により強く依存している。

どんな関係でも、2人のパワーバランスは4つの要素──それぞれが大切に思っているものと、それと引き換えに提供できるものの有無──によって決まる(図1)。

そして、パワーバランスを変えるための戦略も、「引き寄せ」「連携」「拡大」「撤退」の4つに分類できる。これらの戦略は古今東西あらゆる組織や人間関係、さらには国家間の関係まで、あらゆる場面で活用されている。

220712p18_Chart_01.png

ここではダイヤモンド業界を例に取り、4つの戦略を順に見ていこう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、フェンタニル巡る米の圧力に「断固対抗」=王外

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中