最新記事

経営

注目が高まる「労働時間」 出張先への移動は労働時間に入る?

2022年6月30日(木)17時40分
吉田優一 ※経営ノウハウの泉より転載
出勤

xavierarnau-iStock.

<最近はクラウド勤怠システムが普及しているが、そもそも労働時間とは何か。誤解も多い労働時間について、5つのケースを解説する>

企業経営において、労務管理の中でも勤怠管理の整備は重要です。最近は多くのクラウド勤怠システムがリリースされ普及するなど、労働時間に対する注目は増しています。

「どの勤怠システムがいいのか?」「使いやすい勤怠システムはどれか?」などさまざまな議論がありますが、そもそも労働時間とは何かということを理解していないと、正確な労働時間管理はできません。

そこで今回は、労働時間になるかならないか具体的なケースを5つ取り上げて解説します。

そもそも労働時間とは?

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に判断される否かによります。つまり、雇用契約書や就業規則等によって、労働者の行為が労働時間か否か決まるものでなく、実態として労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれていれば労働時間となり、そうでなければ労働時間とはなりません。

例えば「雇用契約書に着替えの時間は労働時間ではない」という文言が明記されている雇用契約書を労使間で締結したとします。そのような状況であったとしても、実態として着替えの時間が使用者の指揮命令下に置かれていると評価されれば、労働時間として扱われることになります。具体的には下記の5つの要件を満たしていると、労働時間と認定されやすくなります。


■労働時間と認定される5つの要件■
1. 一定の場所的な拘束下にあること
2. 一定の時間的な拘束下にあること
3. 一定の態度ないし行動上の拘束下にあること
4. 一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束下にあること
5. 一定の労務指揮権に基づく支配ないし監督的な拘束下にあること
出典:安西 愈 新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務 [全訂7版]2010

さて具体的な5つのケースをご紹介します。

Q1:通勤時間は労働時間になるか?

A1:労働時間にはならない

<解説>

通勤時間中は「音楽を聴く」「本を読む」「睡眠をとる」など自由に行動できます。またいつ自宅を出発するか、どのように会社から帰るかなど自由であるため、時間的拘束や場所的拘束が弱く労働時間とはなりません。

ただし、通勤時間であっても、業務メールを作成・送信させている場合や仕事の資料を作成させている場合は労働時間と認定される可能性があります。

Q2:出張先までの移動時間は労働時間になるか?

A2:労働時間にはならない

<解説>

出張先までの移動時間は通勤時間と同様に労働時間とはなりません。このため出張先までの移動時間に対して、賃金を支払う必要はありません。しかし、出張は労働者の時間的拘束や体力的負荷が大きいため、出張手当や日当などの名目で経済的な補償を行うことが多いです。

ただし、宝石など常に監視が必要なもの運ぶ出張や、会社に立ち寄ってから出張先に向かう時間は労働時間となる点にご注意ください。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中