何かに取り憑かれたかと思うほど心揺さぶられる本...「一流の生き方」の教科書
念頭に置いていたのは映画監督、黒澤明さんの言葉です。黒澤監督は『七人の侍』をつくる際、こんな風に語ったそうです。「ステーキの上にうなぎのかば焼きを乗せ、カレーをぶち込んだような、もう勘弁、腹いっぱいという映画を作ろうと思い、制作した」。この発想を書籍の世界に持ち込んで、これでもかというくらいに次から次へと感動が押し寄せるような本になればという思いを抱いていました。
どんなに忙しい方でも1日2、3分なら読書の時間をとれると考え、2、3分で1つの話を読めるように必ず1ページにおさめました。毎日読み続けていただくためには、その1ページのなかに必ず感動がなければいけない。そうした内容にするべく、記事選びにはこだわり抜きました。
── 掲載する記事はどのような指針をもとに選ばれたのでしょうか。
小森 方針は1つだけ、「自分の心が熱くなったかどうか」です。話し手は、有名無名を問わず、経営者、アスリート、作家、デザイナー、医師、教育者、科学者など実にさまざま。1冊を読み通してみると、職業や立場が違っても、共通項のようなものが浮かび上がってくる。それは本書にも登場するプロゴルファー杉原輝雄さんの言葉を借りると、「人間のプロ」になるための心得に通底するのではないかと思います。
「365篇を集めるのは大変だったのでは」とよくいわれるのですが、編集しているときは楽しくて夢の中にいるようだった。まさに夢中でしたね。
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
著者:藤尾秀昭(監修)
出版社:致知出版社
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稲盛さんの言葉が、コロナ禍で不安を抱える人たちへのエールになる
── 『稲盛和夫一日一言』は稲盛さんの金言がコンパクトにまとめられ、読むたびに心洗われる一冊でした。本書を制作するようになった背景を教えていただけますか。
小森 稲盛和夫さんの語録集は、致知出版社の社長である藤尾秀昭が10年以上前からあたためていた企画でした。稲盛さんの人生哲学、経営哲学である京セラフィロソフィを学び、継承することを目的に開設された「稲盛ライブラリー」の方々に全面的にお力添えいただき、実現に至りました。特徴は、これまで京セラ内でのみ語られた秘蔵の講話やスピーチなど、初公開の言葉も多数収録されていること。短い言葉もあれば比較的長めの言葉もあり、独特のリズムがあって、一冊を一気に読み通しても心に刺さる言葉がいくつもあるはずです。
── 10年以上前からですか。
小森 なぜこのタイミングでその企画を実現できたのか。コロナ禍で悩みや不安を抱えている方が多いいまこそ、JAL再建など幾多の困難を乗り越えてきた稲盛さんによる、体験に裏打ちされた言葉が貴重な指針となるのではないか。そうした考えが実現の後押しになりました。