分量も分からないレシピ本なのに大好評! 滝沢カレン『カレンの台所』の魅力
── 大川さんのご担当作品はどれもユニークな企画で、読んでいて楽しく、「私のための本だ」と思えるものが多いですよね。本をつくるときのコンセプトのようなものがあるんでしょうか。
やってみたいことや困っていることがある人にとって、最初の入り口になる本をつくりたいと思っています。何かをはじめるときって、最初に教えてくれる人や手に取る本が重要ですよね。ナビゲートがいいと、うまくハマれますから。
ターゲットは、自分か、自分の半径5メートル以内の人。たとえば『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』は、フリーランスの知人が「確定申告って難しすぎる」と言っていて、「この人が確定申告ができるような本があったらいいな」と思って企画しました。
── 困りごとからスタートするというのは、編集者以外の職業の方にもヒントになりそうです。書籍として形にするうえでは、どのようなことを意識しているんですか。
内容をあえて絞ることです。「あの話もおもしろかったし、この知識も入れたい」と詰め込みたくなるんですが、初心者に大量の武器を渡しても困ってしまうはず。
だから「最低限、この武器の使い方がわかれば楽しめるよ」という内容だけに絞ります。最初から全部を与えるのではなく、読んだ後にアクションを起こして、もっと学びたくなるのが理想ですね。そのために、初心者にふさわしいラインを慎重に探っています。
── 編集といっても、著者の選定、企画立案、取材、デザイン依頼、プロモーション戦略の検討など、さまざまな工程があります。大川さんにとって、一番テンションが上がる瞬間はいつでしょうか。
取材をしながら本の構成を考えるのがとにかく大好きなんです!
私がカメラをはじめるとき、とにかくたくさんの本を読んでみました。でも物分かりの悪い自分は全くカメラが使えるようにならなくて(笑)。「どうしてこういう言い回しなんだろう」「ここを教えてくれたらわかるのに」と、疑問や要望がたくさん出てきて、それを本に落とし込むのが楽しくて。
そのときのように「ここがわからない」「これはどういうことですか?」とたくさん「文句」を集めて、著者さんにぶつけている感じです(笑)。
── 楽しそうですね! 大川さんご自身が、初心者目線で「わからないこと」をていねいに翻訳して、他の人に武器を配っている。だから大川さんが担当した本は売れるんだろうと感じました。
ありがとうございます! とにかく私、「わからないこと」に自信があるんです(笑)。自分の「知りたい」という欲望を満たすときに、制作のエネルギーが湧く気がします。