人間には簡単だが機械には苦手なこと、その力を育むものこそ「数学」だ

2021年11月18日(木)11時54分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ところが最近になって、膨大なビッグデータを使うことでコンピュータが抽象化を行えるようになってきた。この変化が、まさにAIの誕生や。

将棋で言えば、盤面をパッと見て、先手後手のどちらが有利か人間にはわかるやろ。これをコンピュータにやらせるには、評価関数というものをつくって実際の盤面を当てはめることになる。飛車を持っていたらプラス何点、王将に届く駒があればプラス何点というような関数や。この評価関数があれば、コンピュータは一瞬にして盤面を評価して点数を決められるんやけれど、その評価関数自体はコンピュータにはつくれず、人間が考えていた。だからなかなか人間を超えられなかったんやな。コンピュータは具体化をしていたんやけど、どちらが優勢か評価する、抽象的な関数を定義するのは人間の担当だったんや。ところが、大量の棋譜を機械学習することで、コンピュータが自分自身でこの評価関数をつくれるようになった。

同じように、プラトン君とアルキメデス君の写真をみて見分ける方法は、いままで人間が教えないとあかんかったので、やろうとしても効率は非常に悪かった。ところが、大量の写真を使うことによって「顔の見分けかた」をコンピュータ自身が定義できるようになった。

自然言語処理も、いままでは人間が「ここで単語が終わるんやでー」とか「主語はこうやって見つけるんやでー」と教えようとしていたから上手くいかんかったんやけど、インターネット上のビッグデータや大量の録音データから、言葉を認識する方法自体を、コンピュータ自身が見つけられるようになった。

コンピュータが抽象化を身につけた。これがAIの正体や。

環: そんなにシンプルに言い切っちゃっていいんですか。

ピ: いままで誰もAIの意味を定義できんかったんやから、シンプルなほうがかっこええやろ。具体化するのがただのコンピュータ・プログラム。抽象化できたらAIや。

「計算は電卓やExcelですればいいんだから数学はいらん」という言説があるやろ。これは半分の意味では正しいが、もう半分を無視しとる。具体的な数値を計算するのは圧倒的にコンピュータが速くて正確や。例えばsin(15°)+sin(45°)を計算したいのならExcelにそう入力すれば値がでるから、三角関数の公式なんて知らなくてもええ。しかし、抽象的なその「三角関数の計算方法」を考えるのは人間のお仕事や。抽象的に考えるには数学が必要なんや。少なくともいままではな。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中