中国進出の日本企業は、極めて苦しい立場に立たされている
THE XI SQUEEZE ON CEOS
グローバル企業のCEOが対中ビジネスについてこれほど率直に語ることも珍しいだろう。しかし、中国は実際に、自分たちの意に反する決定をした国の企業に報復している。
2017年初めに韓国のロッテグループは、北朝鮮に対する抑止力として米軍が開発したミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を配備する韓国政府に、ゴルフ場の土地を提供することで合意した。
中国は、このシステムのレーダーが自国の軍事飛行も追跡できると主張。ロッテは中国国内の数十店舗が営業停止処分を受け、さらに免税品の販売サイトがサイバー攻撃で一時ダウンした。一連の騒動で同社は2億ドル近い売り上げを失った。
世界の「製造強国」を目指す
先進国とその企業は、2つの懸念に直面している。1つは、中国との間で激化する技術開発競争だ。
中国は2015年に、「中国製造2025」と呼ばれる産業政策を発表した。バイオテクノロジー、ロボット、通信など幅広いハイテク分野でトップ企業を育成し、「世界の製造強国の仲間入り」をするという野心的な計画だ。
さらに、建国100年に当たる2049年までに、少なくとも10の重点分野で世界的な競争力を持つことを目指す。
産業ロボットのファナックや、人工知能の開発も手掛ける東芝や富士通などにとって、中国はもはや普通の市場ではない。ハイテク企業は「北京を捕食者と見なし、自分たちの知的財産を何としても守らなければならない」と、日産の元役員(匿名を希望)は語る。
企業の投資判断を左右するもう1つの要因は、中国から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、世界中の多国籍企業がサプライチェーンの脆弱性を目の当たりにしたことだ。
バイデン政権は2月に、アメリカのサプライチェーンの脆弱性の検証を指示。6月に発表された報告書は、中国と同じように幅広いハイテク産業に補助金を給付することや、中国に移転されたサプライチェーンを国内に戻すよう企業に働き掛けることを求めている。
日本は昨年、一足先に行動を起こしている。中国から東南アジアや日本に生産拠点を移す企業への補助金制度を導入し、57件、約574億円分を決定。2200億円を計上した予算を860億円積み増している。
これを中国経済からの大々的な「デカップリング(分断)」の始まりだと称賛するアナリストもいるが、米シンクタンク「戦略国際問題研究所」シニアフェローのスコット・ケネディはこう指摘する。
「補助金を受ける企業をよく見ると、中国に大規模な投資をしている大手メーカーではなく、中小企業ばかりだ」