ロシア国営ガスプロムに欧州から厳しい視線 ガス価格高騰で
長期契約相手の欧州企業が本当に供給増を求めているかもはっきりしない。ロイターが問い合わせたところ、ウィンガスとエンジーは追加のガス供給は要請していないと回答。ENI、ユニパー、OMV、RWEはガスプロムが契約を履行しているという以上のコメントは出さなかった。
2人のガスプロム関係者は、スポットの買い手からもっとガスが欲しいという声は聞かれないと話した。
ガスプロムのデータからは、旧ソ連圏外向けの1─9月輸出が前年同期比15.3%増の1458億立方フィートだったことが分かる。この輸出先には欧州とアジアが含まれている。
ノルドストリーム2が稼働すれば年間の供給能力は550億立方メートル上乗せされる。ただガスプロムが既存のパイプライン経由で欧州スポット市場の買い手に供給量を急いで増やしている気配はほとんど見当たらない。同社が10月分の「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインの輸送枠全体のうち抑えたのはおよそ3分の1にとどまり、ウクライナ経由での追加輸送もしていない。
供給余力
スポット市場のデータを見ると、ロシアからの供給はむしろ減っている。フィッチ・レーティングスのシニアディレクター、ドミトリー・マリンチェンコ氏によると、7-9月にガスプロムが欧州スポット市場で販売した年内受け渡し分のガスは5億立方メートルで、欧州経済がまだ低調だった1年前の31億立方メートルを下回った。
マリンチェンコ氏は「ガスプロムの輸出がそれほど高まらないのは国内で生産を抑制している結果か、それともノルドストリーム2の稼働で需要が強まるようにする狙いなのか、完全には分からない」と述べた。
欧州の天然ガス価格は8月、ガスプロムがノルドストリーム2経由で年内に56億立方メートルを出荷する意向を示すと一時軟化。その後欧州側の承認手続きが長引くとともに、そうした新規供給への期待が薄れ、価格は反発した。ノルドストリーム2から予定していた供給分を別ルートに切り替えができるのかどうかは、なお判然としていない。
BCSグローバル・マーケッツのシニアアナリスト、ロナルド・スミス氏は、いずれにしても追加供給があれば欧州の天然ガス価格高騰を抑える効果があると指摘。「今のように市場が緊迫している局面なら、小規模の追加供給でも価格に並外れた影響力を及ぼすことができる」と強調した。
とはいえガスプロムはもうそれほど余力がないかもしれない。スミス氏によると、同社の生産量は日量15億立方メートル超というピークに近づいている。一方、北西欧州に保有する在庫は1年前に比べて70%ほど少ないことが、リフィニティブのデータから読み取れる。
つまり欧州はもっと厳しい状況に置かれかねない。ゴールドマン・サックスは「ガスプロムの北西欧州在庫が極めて低いという点を踏まえれば、同社がこの冬を通じて契約上の義務を果たせなくなるリスクがあるとみている」と警告した。
(Katya Golubkova記者、Vladimir Soldatkin記者)
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