酒造メーカー大手、ポストコロナにらみ2万円以上の高級スピリッツ市場に照準
酒造大手各社は1本200ドル(約2万2000円)以上する高級スピリッツ(蒸留酒)の売り上げを伸ばそうと、買収や合弁などの戦略を進めている。ミラノのバーで7月撮影(2021年 ロイター/Flavio Lo Scalzo)
酒造大手各社は1本200ドル(約2万2000円)以上する高級スピリッツ(蒸留酒)の売り上げを伸ばそうと、買収や合弁などの戦略を進めている。市場規模500億ドルのこの分野は全体が1兆ドルのアルコール飲料市場の中で最も成長スピードが速い上に、コロナ禍収束後にさらなる拡大が見込まれるためだ。
仏高級ブランド大手LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のワイン・蒸留酒部門モエ・ヘネシーと伊酒造大手カンパリは先月、高級飲料のオンライン販売で提携すると公表。高級コニャック「マーテル」のメーカーである仏ペルノ・リカールはこの2年間に、高級ジン「季の美」を手掛ける京都蒸溜所など複数の「超高級」、「究極の高級」ブランドへの出資を発表した。
低価格品上回る市場拡大の予想
酒造大手がM&Aの機会を模索するのは、アルコール飲料市場では今後5年間、高価格帯の販売が低価格帯を上回ると予想されるからだ。
IWSR・ドリンクス・マーケット・アナリシスによると、1本(750ミリリットル)当たり200ドル以上の高級スピリッツは2025年までの売上高伸び率が年9.3%と見込まれている。これに対して価格が10ドルの手ごろな価格帯の伸び率は0.8%にとどまる見込み。
ペルノ・リカールのポートフォリオ・ストラテジー・ディレクター、アイブス・シュラデンホイフェン氏は「高価格帯は今も、そしてこれからも、当社の経営戦略の重要なけん引役だ」と期待を寄せる。
バカルディのトニー・ラーサム最高財務責任者(CFO)は「(コロナ禍の)ロックダウンでカクテルが再び関心を集め、人々は自宅でカクテル作りの技術を磨いた」と話した。今後は人々が冒険心を強め、またバーで飲むようになったときに高価格で品質の優れた酒を求めるようになるとみている。
ボウモアウイスキーを手掛ける非上場のビーム・サントリーは、2030年までに売上高に占める高級品の比率を半分以上にする構えだ。
インドで高級ウイスキーを展開するキンダル・グループを率いるシッダース・バネルジ氏は、一部の消費者は新型コロナのパンデミックで人生は短いと痛感し、今を大切にする生き方になったと指摘。「酒に対する哲学的な姿勢がある。つまり人々は、いつ死んでもおかしくないと考え、お金で命は助からないと達観した」と話した。