最新記事

アルコール

酒造メーカー大手、ポストコロナにらみ2万円以上の高級スピリッツ市場に照準

2021年8月14日(土)11時39分
ミラノのバー

酒造大手各社は1本200ドル(約2万2000円)以上する高級スピリッツ(蒸留酒)の売り上げを伸ばそうと、買収や合弁などの戦略を進めている。ミラノのバーで7月撮影(2021年 ロイター/Flavio Lo Scalzo)

酒造大手各社は1本200ドル(約2万2000円)以上する高級スピリッツ(蒸留酒)の売り上げを伸ばそうと、買収や合弁などの戦略を進めている。市場規模500億ドルのこの分野は全体が1兆ドルのアルコール飲料市場の中で最も成長スピードが速い上に、コロナ禍収束後にさらなる拡大が見込まれるためだ。

仏高級ブランド大手LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のワイン・蒸留酒部門モエ・ヘネシーと伊酒造大手カンパリは先月、高級飲料のオンライン販売で提携すると公表。高級コニャック「マーテル」のメーカーである仏ペルノ・リカールはこの2年間に、高級ジン「季の美」を手掛ける京都蒸溜所など複数の「超高級」、「究極の高級」ブランドへの出資を発表した。

低価格品上回る市場拡大の予想

酒造大手がM&Aの機会を模索するのは、アルコール飲料市場では今後5年間、高価格帯の販売が低価格帯を上回ると予想されるからだ。

IWSR・ドリンクス・マーケット・アナリシスによると、1本(750ミリリットル)当たり200ドル以上の高級スピリッツは2025年までの売上高伸び率が年9.3%と見込まれている。これに対して価格が10ドルの手ごろな価格帯の伸び率は0.8%にとどまる見込み。

ペルノ・リカールのポートフォリオ・ストラテジー・ディレクター、アイブス・シュラデンホイフェン氏は「高価格帯は今も、そしてこれからも、当社の経営戦略の重要なけん引役だ」と期待を寄せる。

バカルディのトニー・ラーサム最高財務責任者(CFO)は「(コロナ禍の)ロックダウンでカクテルが再び関心を集め、人々は自宅でカクテル作りの技術を磨いた」と話した。今後は人々が冒険心を強め、またバーで飲むようになったときに高価格で品質の優れた酒を求めるようになるとみている。

ボウモアウイスキーを手掛ける非上場のビーム・サントリーは、2030年までに売上高に占める高級品の比率を半分以上にする構えだ。

インドで高級ウイスキーを展開するキンダル・グループを率いるシッダース・バネルジ氏は、一部の消費者は新型コロナのパンデミックで人生は短いと痛感し、今を大切にする生き方になったと指摘。「酒に対する哲学的な姿勢がある。つまり人々は、いつ死んでもおかしくないと考え、お金で命は助からないと達観した」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国、インドへの関税緩和の可能性=印主席経済顧問

ワールド

自公立党首が会談、給付付き税額控除の協議体構築で合

ビジネス

多国発行ステーブルコインの規則明確化するべき=イタ

ビジネス

エクソンCEO、ロシア事業再開の計画なしと表明=F
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中