最新記事

BOOKS

福岡市長が、「福岡市から日本を変える」ことにこだわる合理的な理由

2021年7月28日(水)18時31分
flier編集部

戦う相手の動向はどうか、その課題解決にあたる人たちが時間的・能力的に戦いに臨める状況か、自分のポリティカルキャピタル(編集部注:政治家が有権者から得られる支持、意見を通すのに必要な影響力)はどうか。こういったことをもとに、一度に挑戦できる課題を決めて、優先順位をつけています。

また、私は政党に属していないので、制度改正のように議会の同意が必要な場面では、改革を成し遂げるために、同じ志を持った仲間や協力者をつくることが肝になってきます。

政令指定都市という地の利を生かし、挑戦のロールモデルをつくる

── 福岡市は全国に先駆けて行政のハンコレス化を完了させ、福岡都心部を感染症対応シティにつくりかえるなど、まさに挑戦・変革を体現しています。それを可能にしている要因は何でしょうか。

福岡市が、「都道府県とほぼ同等の権限」と「基礎自治体(市町村)としての現場」をあわせもつ「政令指定都市」であることは、大きなメリットでした。しかも福岡市は国家戦略特区でもあるため、国へ規制緩和も提案でき、エリア限定で色々試せるので、成功事例をつくりやすいのです。

210728fuku_01.jpg

高島宗一郎市長 flier提供

── 直近の挑戦の事例を教えてください。

具体的な事例は多数ありますが、その1つは、福岡市のスタートアップであるウェルモと共同で行っている、AIを使った「介護予防ケアプラン作成支援システム」の構築です。

高齢者の状態、病歴、介護支援に関する情報などを一つのプラットフォームにまとめました。そして、過去の膨大なプランや各種データを学習させたAIを活用することで、エビデンス・ベースで精度の高いケアプランを効率的に作成できるようになります。これは日本初の取り組みです。

こうしたシステム構築を実現できた背景には、福岡市が160万人の人口を有しており、多様なデータを収集できること、先進技術を使った民間企業の社会実証を後押ししてきたことがあります。官民が連携したデータ活用のロールモデルをつくることが、国全体を最速で変え、世界の高齢者問題の解決策にもなっていくはずです。

まずは「やってみせる」

── 高島市長は36歳のときに最年少市長となり、挑戦を続けていらっしゃいます。福岡から日本を変えていこうとしている理由は何でしょうか。

理由は2つあります。まず「福岡市から変えること」にこだわるのは、それが日本を変えるための合理的なアプローチだから。

例えば福岡市では、mobby rideと組んで、電動キックボードの実証実験・活用を進めてきました。新しいサービスを一斉に全国展開しようとすると、「事故が起こる可能性が高い」といった、リスクを不安視する声、またその不安を煽る既得権側の動きもあり、途端に進めにくくなってしまいます。

ですが、エリア限定で試して課題を解決し、成功事例をつくっていけば、全国各地に適用しやすくなるのです。人はゼロの状態だと実現するイメージが湧きづらく、行動を起こしにくい。だからまず「やってみせる」こと、そして成功事例をつくることが、変化への近道だと考えています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中