ユニクロ? ダイソー? 「パクリ」企業と皮肉られていた中国メイソウが米国上場の驚異
リアル店舗中心、かつグローバル展開のメイソウは新型コロナによる外出や営業制限の影響をもろに受けた。2020年6月期の中国での売上高は前年比5%減の60億元(約940億円)、さらに海外では店舗の20%以上が撤退したという。
目論見書のリスク開示でも、「サプライヤー、加盟店などパートナーの生存能力やサプライチェーンに問題が生じ、経営が悪化する可能性がある」と記載されている。
また、コロナ禍にかかわらず中国の雑貨店市場はレッドオーシャンであり、メイソウの2019年後半の中国既存店売上高は前年同期比3.8%減だった。
目論見書によると、メイソウは創業者の葉氏が株式の80.8%を保有しているが、2018年に中国IT大手テンセントの出資を受け、同社の出資比率は5.4%となっている。メイソウはすでにスマート店舗などデジタル化を進めているが、今後は10億人超のユーザーを抱えるメッセージアプリWeChatなどテンセントのエコシステムやIT技術との連携をより深めていくようだ。
正規ブランドとのコラボも
メイソウにとって成長の源泉でもあった「日本風味」「パクリ」のイメージからいかに脱却するかも課題となっている。
グローバル展開を進める同社は、日本人の三宅氏のほか、フィンランド、デンマーク、韓国からデザイナーを起用しているが、トレンドのいいとこどりなため、何らかの著名ブランドを連想される商品が多い。
2019年の長江商報の報道によると、メイソウは68件の訴訟を抱えており、24件は意匠権と商標権絡みだ。原告にはルイ・ヴィトン、メンソレータムなど世界的な著名企業が名を連ねる。
そして「パクリ」から脱却するため、メイソウが最近最も力を入れているのは、正規ブランドとのコラボだ。アメリカの漫画出版社「MARVEL」やディズニー、ハローキティなど、コラボ相手は17件。
目論見書によると、メイソウは2020年6月期に1億元(約16億円)を超えるライセンス料を支払っている。だが、自社での商品開発力にはまだまだ課題も多い。
さらに、メイソウが上場申請した9月23日、上海薬品監督管理局は化粧品のサンプル調査で、メイソウのネイルから基準の1400倍の発がん性物質を検出したと明らかにした。
日本風味は世界中に広まっている
メイソウは、中国では「日系風味」の払拭に力を入れており、公式サイトでも2015年以前の沿革を記載しないなど、過去の経営は黒歴史になっている。共同創業者の三宅氏のTwitterアカウントも2014年以降更新されていない。
だが、カンボジア、メキシコ、ロシアなど日本企業が進出しきれていないブルーオーシャンの新興国では今も堂々と、「日本風味」で売っている。日本、中国両消費者に皮肉られている間にも、メイソウは着々と店舗を拡大、アメリカで上場し、日本企業の市場を侵食しているのだ。