最新記事

中国経済

ユニクロ? ダイソー? 「パクリ」企業と皮肉られていた中国メイソウが米国上場の驚異

2020年11月2日(月)19時25分
浦上 早苗(経済ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

リアル店舗中心、かつグローバル展開のメイソウは新型コロナによる外出や営業制限の影響をもろに受けた。2020年6月期の中国での売上高は前年比5%減の60億元(約940億円)、さらに海外では店舗の20%以上が撤退したという。

目論見書のリスク開示でも、「サプライヤー、加盟店などパートナーの生存能力やサプライチェーンに問題が生じ、経営が悪化する可能性がある」と記載されている。

また、コロナ禍にかかわらず中国の雑貨店市場はレッドオーシャンであり、メイソウの2019年後半の中国既存店売上高は前年同期比3.8%減だった。

目論見書によると、メイソウは創業者の葉氏が株式の80.8%を保有しているが、2018年に中国IT大手テンセントの出資を受け、同社の出資比率は5.4%となっている。メイソウはすでにスマート店舗などデジタル化を進めているが、今後は10億人超のユーザーを抱えるメッセージアプリWeChatなどテンセントのエコシステムやIT技術との連携をより深めていくようだ。

正規ブランドとのコラボも

メイソウにとって成長の源泉でもあった「日本風味」「パクリ」のイメージからいかに脱却するかも課題となっている。

グローバル展開を進める同社は、日本人の三宅氏のほか、フィンランド、デンマーク、韓国からデザイナーを起用しているが、トレンドのいいとこどりなため、何らかの著名ブランドを連想される商品が多い。

2019年の長江商報の報道によると、メイソウは68件の訴訟を抱えており、24件は意匠権と商標権絡みだ。原告にはルイ・ヴィトン、メンソレータムなど世界的な著名企業が名を連ねる。

そして「パクリ」から脱却するため、メイソウが最近最も力を入れているのは、正規ブランドとのコラボだ。アメリカの漫画出版社「MARVEL」やディズニー、ハローキティなど、コラボ相手は17件。

目論見書によると、メイソウは2020年6月期に1億元(約16億円)を超えるライセンス料を支払っている。だが、自社での商品開発力にはまだまだ課題も多い。

さらに、メイソウが上場申請した9月23日、上海薬品監督管理局は化粧品のサンプル調査で、メイソウのネイルから基準の1400倍の発がん性物質を検出したと明らかにした。

日本風味は世界中に広まっている

メイソウは、中国では「日系風味」の払拭に力を入れており、公式サイトでも2015年以前の沿革を記載しないなど、過去の経営は黒歴史になっている。共同創業者の三宅氏のTwitterアカウントも2014年以降更新されていない。

だが、カンボジア、メキシコ、ロシアなど日本企業が進出しきれていないブルーオーシャンの新興国では今も堂々と、「日本風味」で売っている。日本、中国両消費者に皮肉られている間にも、メイソウは着々と店舗を拡大、アメリカで上場し、日本企業の市場を侵食しているのだ。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中