最新記事

中国経済

ユニクロ? ダイソー? 「パクリ」企業と皮肉られていた中国メイソウが米国上場の驚異

2020年11月2日(月)19時25分
浦上 早苗(経済ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

reuters__20201102183625.jpg

メイソウで売られていた謎の日本語の製品(写真:筆者知人提供)

世界80以上の国と地域に進出している

6月末時点で世界で80以上の国と地域に進出し、店舗数は4222店。内訳は中国で2500店強、海外では1680社強という。今回の上場で調達した資金は新規出店や物流ネットワークの整備、デジタル化に投じる計画だ。

メイソウが短期間で店舗を増やせた要因は、大きく2つがある。1つ目は、創業者の葉氏が雑貨チェーンのノウハウを保有していたことだ。中国メディアの報道によると、貧困農家出身で最終学歴が中卒の葉氏は、2004年に広州市で当時流行していた10元ショップ「哎呀呀(アイヤヤ)」を開店。メイクアップ用品など女性向け雑貨に特化することで、他店と差別化に成功し、2010年には3000店舗を出店、売上高は10億元(約160億円)を超えるまで成長させた。

とは言え、2010年代に入ると10元ショップも競争が激しくなり、さらには無印良品、イケアなど、より高価格帯の海外ブランドも中国で店舗を広げ始めた。

業態の進化を模索する中で、葉氏がヒントを見つけたのは日本だった。

メイソウの公式サイトによると、葉氏は2013年に家族旅行で日本を訪れた際、インテリア雑貨店で売られている「おしゃれで品質がよく、しかもリーズナブル」な商品のほとんどがメイドインチャイナであることに気づいた。

葉氏は、「中国で商品を作れるなら、自身が10元ショップで積み上げたノウハウを生かし、若者受けする雑貨チェーンを展開できる」とひらめき、メイソウの設立に至った。

葉氏はメディアのインタビューに、「無印のようなおしゃれな雑貨を、ユニクロのような手ごろな価格で提供する」と語ったこともある。

目論見書によるとメイソウの商品の95%が50元(780円)以下だ。中国市場は顧客の80%が40歳以下で、30歳以下が60%と若年層に支持されている。新興国ではメイソウもブランド化し、「ユビソウ」など類似ブランドも生まれている。

メイソウが迅速に規模拡大できたもう1つの理由は、同社が日本のコンビニのようなフランチャイズ制を採用していることだ。メイソウが展開する4222店舗のうち、直営店は129店しかなく、その多くが海外店舗という構成になっている。

公式サイトの加盟店募集情報によると、加盟店は最初に75万元(約1200万円)の保証金を納め(返還あり)、年間8万元(約130万円)のロイヤルティーを支払う。商品はメイソウ所有で、店舗売り上げのうち62%をメイソウが、38%(食品は33%)を加盟店が受け取る。

中国のメイソウ店舗は大型商業施設や人通りの多い繁華街に集中しているが、テナント料は加盟店が負担する。また、中国メディアによると販売スタッフの研修費もスタッフもしくは加盟店持ちとなる。

メイソウは2018年12月、「2022年までに100カ国、1万店舗、売上高1000億元体制を実現する」と発表したが、各店舗の経営リスクの多くは加盟店が負うため、メイソウにとっては店舗あたりの経営効率を上げるよりも出店数を増やすほうが手っ取り早い。

海外店舗は4割に達している

また、葉氏は2015年に融資プラットフォーム「分利宝」も設立し、メイソウの加盟店に初期費用なども貸し付けているが、上場申請を控えた8月に分利宝は閉鎖された。

上場申請時に1億ドルを調達予定としていたメイソウは、計画を大きく上回る発行価格がつき、上場初日も好発進した。だが、今後の経営にはリスクもくすぶる。目下直面しているのは、収束の見通しがつかないコロナ禍だ。

目論見書によると、同社の売上高のうち4億1540万ドル(約440億円)が海外店舗によるもので、全体の3分の1を占める。店舗数で見ると、海外店舗は4割に達する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ワールド

25年度補正予算が成立=参院本会議

ビジネス

EU、35年以降もエンジン車販売を容認する制度検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中