最新記事

中国経済

ユニクロ? ダイソー? 「パクリ」企業と皮肉られていた中国メイソウが米国上場の驚異

2020年11月2日(月)19時25分
浦上 早苗(経済ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

日本語の商品を販売しているにもかかわらず、正体は中国企業。そんな謎の企業「メイソウ」がアメリカで上場しました。いったいどんな会社なのでしょうか EDGAR SU - REUTERS

「無印良品とユニクロとダイソーを足して3で割った中国ブランド」と揶揄されることもある名創優品(メイソウ、MINISO)が10月15日、ニューヨーク証券取引所に上場、初値は公募価格の20ドルを上回り、24.4ドルをつけた。

かつて、公式サイトで「無印良品、ユニクロ、ワトソンズから『世界で一番怖い競争相手』と称される」と自称していたメイソウは、2013年の創業から7年で、店舗網を80以上の国と地域、約4200店舗に拡大している。

店舗数ではユニクロ(2196店舗、2019年8月期)と無印(1033店舗、2020年2月期時点)を足した数を上回っている。堂々と既存ブランドを模倣し、中国の消費者からも「パクリ」企業と皮肉られてきたメイソウは、なぜ短期間でここまで急成長できたのか。

意味不明な日本語にもやもやする在中日本人

メイソウ1号店が中国・広州市に出現したのは2013年秋。以降、全国に猛烈な勢いで増殖し、ユニクロを彷彿させる赤いロゴと、ブランド名は無印良品を思わせる「名創優品」に、2014年には在中日本人がざわつき始めた。

ちなみにロゴや商品は「MINISO」「メイソウ」という英語・日本語が使われている。販売する商品は10元の雑貨が多く(約160円、当時)、ビジネスモデルはダイソーだ。

一見日本ブランドのように見えるメイソウだったが、商品名や商品説明の日本語はほとんど意味不明だった。

無印風のボトルに入った化粧液の商品名は「保湿補水乳だった」と意味不明なうえになぜか過去形だ。

洗剤の容器には「強ぃの洗潔剤」、ボディソープには「と皮膚の皮橡擦」「消しゴムのような肌」と記載されている。

本社は東京・銀座、2017年時点で公式サイトには「2013年に中国に進出」と紹介されていたが、日本の出店は2014年秋と中国より後だ。

だが、「変な日本語」が気になって仕方がないのは日本人だけで、無印良品やイケアが「コンセプトの明確なライフスタイル雑貨」という市場を開拓しつつあった中国では、「おしゃれな雑貨をリーズナブルな価格で扱う日本ブランド」はすぐに受け入れられた。2015年には都市部の商業施設や繁華街で普通に見かけるようになり、中国人消費者に日本ブランドの模倣と気付かれた後も、成長は止まっていない。

今では周知の事実だが、メイソウは「日本ブランド」を巧みに模倣した中国ブランドだ。創業後しばらくは日本人デザイナー三宅順也氏を共同創業者に据えて企業の顔としていたが、今は公式サイトでも本当の創業者、葉国富氏が前面に出ている。

また、グローバル展開とともに、ほとんどの商品から日本語が消え、代わりに多言語の商品説明が添えられるようになった(とは言え今も丁寧に探せば、変な日本語を見つけることはできる)。

上場にあたってメイソウがアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書からは、ベールに包まれていた同社の経営状況も明らかになった。2020年6月期、同社の流通総額は190億元(約3000億円)。売上高はコロナ禍の逆風で前年同期比4.4%減の89億7900万元(約1400億円)、純損益は2億6000万元(約40億円)の赤字だった。

reuters__20201102183310.jpg

メイソウで売られていた、謎の日本語の製品(写真:筆者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NY州司法長官が無罪主張、銀行詐欺など巡り トラン

ワールド

EU・中国、希土類輸出規制巡り来週協議 摩擦の緩和

ワールド

中国、鉄鋼生産抑制へ対策強化 電炉や水素還元技術を

ビジネス

米総合PMI、10月は54.8に上昇 サービス部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中