最新記事

感染症対策

クラスター発生しがちなコールセンター 全面リモートワークできない事情とは

2020年5月5日(火)21時00分

行政側は「整備」求める要請

コールセンター業務については、行政側の方針が明確でない、という問題もある。4月17日、総務省は電気通信事業者協会に対し、新型コロナ対策の強化を促す要請文書を出し、その中で販売店への来店数を抑制するため、対面接触を伴わない「ウエブページやコールセンターの体制整備に努めること」を求めた。

コールセンター業務の拡充を促したとも受け取られる要請の表現について、同省の担当者は「対面での接客を伴わない形に誘導するため、代替策の一例として挙げた」とし、「顧客の苦情や相談への対応の形まで指定しているわけではない」と説明する。

しかし、対面での営業活動を自粛するとなれば、企業にとってコールセンター業務の大幅な変更は難しい。すでに社会のライフラインとなっている携帯電話サービスの規模や質を維持するためにも、一気にテレワークに全面移行して混乱を招く事態は避けたい、というのが企業側の本音だ。

「実店舗で(来店客と従業員の接触を防ぐため)時短営業にしていることもあり、コールセンターを開けておかないと公共性の高いサービスが途絶えてしまう」とエボルバの親会社であるKDDIの広報担当者は話す。現時点ではオペレーターの陣容縮小をしながら、業務を回している状態という。

携帯各社だけでなく、製造業でもコールセンター業務はテレワーク推進のネックになっている。富士ゼロックスのコールセンターに勤務してる派遣社員の一人は、原則としてオフィスでの通常勤務を指示された。同派遣社員は「感染してからでは手遅れだ」と憤る。

富士ゼロックス側は、業務における感染リスクを減らすため、派遣、正社員にかかわらず「可能な限りテレワークは導入している」(同社広報)と説明。しかし、同社のコールセンターでは、顧客が持つ複写機などと同じ製品をオペレーターがオフィスで確認しながら問い合わせに応対する必要がある。テレワークへの全面的な移行は難しく、「出社してもらう人もいる」と話す。

企業の労働組合に属さない派遣業者などの労務問題を扱う総合サポートユニオンの青木耕太郎氏によると、コールセンターに勤務するオペレーターから、この1か月間で約100件を超す相談が寄せられているという。

政府が出勤者数を「最低7割、極力8割」減らすよう要請する中、コールセンターをはじめ、テレワークが可能な職種でも、いまだにオフィスでの作業を原則とする日本企業は後を絶たない。

米グーグルが4月26日に発表したGPS情報などに基づいて分析したデータでは、新型コロナの感染拡大前と比べ、7都府県の出勤者は30%程の減少にとどまった。

テレワークについてみると、パーソル研究所が4月10─12日に実施した調査で、企業のテレワーク実施率は全国平均が27.9%で、7都府県では38.8%にとどまっているとの結果が出た。3月時点と比べて増加はしたが、テレワーク導入に成功した企業は未だ少数派だ。


【関連記事】
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・東京都、新型コロナウイルス新規感染87人確認 都内合計4655人に(インフォグラフィック)
・韓国のコロナ対策を称える日本に欠ける視点
・トランプ「米国の新型コロナウイルス死者最大10万人、ワクチンは年内にできる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中