「生き残りの鍵は『日本の社会主義化』 中韓が市場を奪取」中野剛志氏
優良企業が淘汰される矛盾、日本企業のバーゲン
中野氏は危機終息後について、日本経済がV字回復することは望めないと予想する。企業倒産や失業の増大で供給側の能力が毀損されてしまうためで、「需要が回復しても、供給が追い付かず、停滞が続く」と語った。
廃業や倒産が経済の新陳代謝を促すとする一部の主張に対し、「今回のコロナ危機でより生き残りやすいのは、内部留保がより大きい企業」と反論。「積極的な設備投資、R&D(研究開発)、労働分配を行ってきた優良企業が逆に淘汰されてしまうため、企業の廃業や倒産を放置すると、かえって非効率な経済となってしまう」とした。
さらに、拡大期が早く訪れた国ほど終息時期も早いとし、主要国では中国、韓国、欧州、米国、日本の順番になると予測した。「先に復活した中国や韓国の企業が世界市場を奪ってしまい、日本が生産活動を正常化させた時には、もはや海外市場の取り分はないという事態が想定される」と語った。その上で「日本企業やその資産や技術は、お買い得のバーゲンセール状態であろう」と述べた。
グローバリゼーションは死語に
中野氏は、今回のコロナ危機が世界秩序にも影響を与えると予測。世界的に失業率が高まる中で自国第一主義が台頭し、グローバリゼーションは大きな転機を迎えると指摘した。保護主義が広がり、各国政府が強力に産業政策を主導していく可能性が高いという。中野氏は「グローバリゼーションは死語になっているであろう」とした。
その中で日本が財政支出に消極的な姿勢を示し、内需を維持・拡大せず、海外の需要を奪うようなことになれば、「近隣窮乏化策とみなされ、反日的な排外主義を招く」と懸念。「他国と同等、あるいはそれ以上の財政出動を行って、内需を拡大し、むしろ輸入を増やすことだ」と語った。
中野氏は「コロナ危機後の世界秩序は、コロナ危機の下で社会主義化を決断し、実行した国が生き残り、社会主義化できなかった国が凋落する」と述べた。
(インタビュアー:竹本能文)
*インタビューは20日、電子メールで行いました。
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