最新記事

日本社会

「生き残りの鍵は『日本の社会主義化』 中韓が市場を奪取」中野剛志氏

2020年5月1日(金)17時35分

優良企業が淘汰される矛盾、日本企業のバーゲン

中野氏は危機終息後について、日本経済がV字回復することは望めないと予想する。企業倒産や失業の増大で供給側の能力が毀損されてしまうためで、「需要が回復しても、供給が追い付かず、停滞が続く」と語った。

廃業や倒産が経済の新陳代謝を促すとする一部の主張に対し、「今回のコロナ危機でより生き残りやすいのは、内部留保がより大きい企業」と反論。「積極的な設備投資、R&D(研究開発)、労働分配を行ってきた優良企業が逆に淘汰されてしまうため、企業の廃業や倒産を放置すると、かえって非効率な経済となってしまう」とした。

さらに、拡大期が早く訪れた国ほど終息時期も早いとし、主要国では中国、韓国、欧州、米国、日本の順番になると予測した。「先に復活した中国や韓国の企業が世界市場を奪ってしまい、日本が生産活動を正常化させた時には、もはや海外市場の取り分はないという事態が想定される」と語った。その上で「日本企業やその資産や技術は、お買い得のバーゲンセール状態であろう」と述べた。

グローバリゼーションは死語に

中野氏は、今回のコロナ危機が世界秩序にも影響を与えると予測。世界的に失業率が高まる中で自国第一主義が台頭し、グローバリゼーションは大きな転機を迎えると指摘した。保護主義が広がり、各国政府が強力に産業政策を主導していく可能性が高いという。中野氏は「グローバリゼーションは死語になっているであろう」とした。

その中で日本が財政支出に消極的な姿勢を示し、内需を維持・拡大せず、海外の需要を奪うようなことになれば、「近隣窮乏化策とみなされ、反日的な排外主義を招く」と懸念。「他国と同等、あるいはそれ以上の財政出動を行って、内需を拡大し、むしろ輸入を増やすことだ」と語った。

中野氏は「コロナ危機後の世界秩序は、コロナ危機の下で社会主義化を決断し、実行した国が生き残り、社会主義化できなかった国が凋落する」と述べた。

(インタビュアー:竹本能文)

*インタビューは20日、電子メールで行いました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・「中国製の人工呼吸器は欠陥品」イギリスの医師らが政府に直訴状
・韓国そして中国でも「再陽性」増加 新型コロナウイルス、SARSにない未知の特性
・東京都、新型コロナウイルス新規感染46人確認 都内合計4152人に
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中