ネット通販増加で複雑化 マーケティング担当を悩ませる小売各社「真の実力」
当てにならない手掛り
「ブラック・フライデー」まで1週間を切ったある日、コアサイト・リサーチで高級品・ファッション部門担当のマネージング・ディレクターを務めるマリー・ドリスコル氏のもとに、百貨店のサックス・フィフス・アベニューからメールが届いた。デザイナーズブランドの財布など、小型革製品セールの告知であることに、ドリスコル氏は注意を引かれた。
プレゼント用に使われることの多いこの種の製品の売れ行きが不振なのだろうか。ドリスコル氏はそう考えた。
だが、サックスはそうした見方を否定する。
「顧客宛てのメールをもとに、商品カテゴリー別の売り上げを推計するのは間違いだ。購買嗜好に基づき、顧客それぞれに合った商品を勧めている」と、サックスの広報担当者は言う。
コンシューマー・グロース・パートナーズのジョンソン氏は最近、ノードストロームを訪れるときは、インスタグラム上で誕生したファッションブランドがいくつ出店しているかに注目している。それによって、スマートフォンでブランドを検索する若い買い物客に、どれだけ対応しようとしているかが分るからだ。
関係者によると、ノードストロームでは商品ラインをそれぞれ差別化するため、新ブランドの立ち上げ、限定販売のブランドや新興ブランドとのパートナーシップの拡大といった機会を探っているという。
視界ゼロでの飛行
全米小売連盟は、今年のクリスマス商戦の米小売売上高を前年比約4%増の7307億ドルと予想している。だが、アドビ・アナリティクスがすでに発表した11月1日から12月19日までのオンライン売上高が13.6%増の12560億ドルであることを思えば、この伸び率はいかにも見劣りがする。このオンライン販売のうち、35.3%はスマートフォン経由によるものだ。
アナリストたちは、小売企業が提供する情報が少なすぎ、タイミングも遅すぎるため、非常に限られたデータから結論を導かざるをえなくなっていると指摘する。
「クリスマス商戦の実態が完全に判明するのは数カ月先だ。(小売企業が)実際に発表するまでは、視界ゼロで飛んでいる状態だ」と、17年間にわたってムーディーズの小売業界アナリストを務め、ウォルマートやターゲット、ベストバイといった企業の分析を担当してきたチャーリー・オシア氏は言う。「小売企業が話題にするのは売上高だけ。だが、我々が知る必要があるのは、彼らがどれだけ利益を上げたかだ」
オシア氏によれば、オンラインショッピングについては、第三者の売上高データやアドビ・インサイトのデータを利用することもあるという。
「私たちが見せられているのは多種多様な材料が使われた、ごった煮のようなものだ。そこから1つの推論を描き出そうとしている」と、オシア氏は話す。
(翻訳:エァクレーレン)
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