最初は「自分が何者か」よりも「誰の下で働くか」が重要
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<世界の変化に伴い「80対20の法則」がますます進化している。だが、それは快適な未来なのか。そんな時代にどのように生き、どんな会社・組織で働くべきなのか>
「利益の80%は顧客の20%がもたらす」「仕事の成果の80%は、費やした時間の20%から生まれる」という「80対20の法則」は、世界の変化に伴い進化しているのだと『人生を変える80対20の法則』の著者、リチャード・コッチは言う。
36の言語に翻訳され、世界的ロングセラーとなって20年。このたび刊行された『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』(リチャード・コッチ著、仁平和夫・高遠裕子翻訳、CCCメディアハウス)には、その進化を解説した4章が新たに加えられた。
本書から一部を抜粋し、3回にわたって掲載するシリーズ。ここでは「第19章 八〇対二〇の法則の未来とあなたの居場所」から一部を抜粋する。「80対20の法則」が加速する未来は、果たして個人にとっていいことなのか、悪いことなのか。どうやって生きていけばいいのだろうか。
※第1回:あの「80対20の法則」が90対10、99対1になる時代へ
※第2回:ネットワークと「80対20」が変化を起こす4つの理由
八〇対二〇の法則の未来は、正しく理解すればバラ色にみえるが、いま起きていることがわかっていないと戸惑いをおぼえるばかりだ。ほとんどの人にとって八〇対二〇の法則の未来は快適な場所とは思えないだろうし、勝手知ったる場所でもないだろう。大企業中心で育った人々にとって、世界はおおむね公正で予想できる場所だったが、ネットワーク中心の八〇対二〇の新世界は得体が知れない。
新世界をあえて定義すれば、こう言えるだろう。努力が報われるとともに、不要になっていく世界。「指揮統制型」の巨大企業が減り、非公式のネットワークがあちこちで生まれる世界。学歴で良い仕事が保証されない世界。不安定であることを前向きに受け止め、行動することによってのみ安定を確保できる世界。富とより良い生活への道が誰にも開けているが、みずから道を切り拓き、努力の森と凡庸というぬかるみを抜け出そうとしない者には門戸を閉ざしている世界。
八〇対二〇の未来は、きちんと定義されているわけではないし、矛盾にみち、わかりにくく、微妙なものである。自分がどうみるか、どう定義するかにかかっている。八〇対二〇の未来は、ひとりでに出現するものではない。隠れた金言を読み解き、自分の言葉にしなければならない。自分がやるしかない――材料はすべて揃っているが、最終製品になっていない。組み立てるのはあなたなのだ。あなたやあなたのチームがつくる製品は、わたしやわたしのチームがつくる製品とは違う。そこがいいところだ。成功と喜びに至る道は無数にある。それを発見し、具体化していくのだ。ほとんどの人には、なかなか理解できないかもしれない。とくに年配の人や自分の流儀にこだわる人には厳しいだろう。
あなたの八〇対二〇の未来に、出来上がった地図があるわけではない。だからこそ、挑戦しがいがあり、スリルがあり、わくわくする。地図がないのは、未来があなたの心のなか、あなたにいちばん近い友人や同僚の心のなかに存在するからだ。ほかのどこでもない。八〇対二〇の未来は不可思議で、曖昧で、霧がかかっている。そこが魅力的なのだが、情熱とビジョンがなければ、火をつけ、勢いを得ることはできない。必要なのは、見えない未来を信じる力だ。八〇対二〇の未来を目に見える形にするには、大きなアイデアを描き、それを信じて疑わず、情熱と理性、狂気とひらめきをもって実行することだ。さえない灰色の現実に押し潰されてはならない。