ネットワークと「80対20」が変化を起こす4つの理由
では、ネットワークとは何か?
ワイヤード誌の元編集者のケヴィン・ケリーの説明が的を射ている。
ネットワークは、最小の構造的機構で、いかなる構造ももちうるといえる。
フェイスブックとツイッターはネットワークである。テロ組織や犯罪集団、政治団体、フットボールチーム、インターネット、国連、友人グループ、世界の金融システムもネットワークである。爆発的に成長し、桁外れの富を築いているインターネット関連、アプリ関連の企業――アップル、グーグル、イーベイ、ウーバー、アマゾン、ネットフリックス、エアビーアンドビーは、ネットワークか、自社の生態系にネットワークを抱えている。
ネットワークは、従来のトップダウン型の組織とどう違うのだろうか。
まずは、決定的な違いからみていこう。一般的な組織は、国の官僚組織や軍隊からはじまり、農家、商店、製粉所や工場へと広がり、過去三世紀に産業界や社会全般にみられるようになったが、こうした組織の成長はトップのイニシアチブにかかっている。
伝統的な組織は、トップが計画を立てなければ成長できない。たいてい細かい点まで計画されている。製品設計や製造、マーケティング、販売といった活動をとおして計画は実行に移される。どれもコストがかかり、骨が折れる。組織が大きくなり、影響力を発揮するまでには、長い時間と膨大な労力がかかり、多くの人材と資金を投入する必要があった。
ネットワークは違う。その成長は、ネットワークを所有または支援する組織(があるとしても)の内部から起こるのではなく、外で起きる。ネットワークのメンバーの行動によって、ネットワーク自体が成長する。ネットワークを所有するのが企業であれば、「メンバー」は「顧客」や潜在顧客でもある。ネットワークが成長するのは、内部のダイナミクスのせいでもあるし、成長することがメンバーの利益に適うからでもある。
(中略)
ここから、ネットワークの第二の特性が浮かび上がる。ネットワークは、規模が大きくなるほど価値が高まる。それだけではない。メンバーにとって、そしてネットワークの所有者にとって、価値は直線的ではなく幾何級数的に増えていく。ある町か地域を拠点としたデートクラブに一〇〇〇人の会員がいて、他の会員とのデートを狙っているとする。このネットワークに入りたいと思うだろうか。そうは思えない。小さすぎる。
だが、会員が倍の二〇〇〇人だったらどうだろう。ネットワークの価値も倍になるだろうか。そうではない。じつは価値は四倍になる。会員の組み合わせは四九万九五〇〇通りから、一九九万九〇〇〇通りに増えるからだ。
(中略)
メンバーの活動によって比較的簡単に成長できる、規模の拡大によって価値が幾何級数的に増える、という二つの特質から、三つめの結論が導かれる。ネットワーク組織は、ほかの組織よりも圧倒的に速く、価値を獲得できる。だからこそ、アマゾン、イーベイ、フェイスブック、アリババ、エアビーアンドビー、ウーバーといったネットワーク型の新興企業の価値が、これほど短期間でこれほど上がったのだ。非ネットワーク型企業で、ここまでのペースで企業価値が高まった例はない。