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藤田哲也(気象学者)
気象界のミスター・トルネード
University of Chicago Photo
アメリカの天気予報官の間では、今は亡き気象学者、藤田哲也の名前はおなじみだ。藤田が提唱したトルネード(竜巻)の規模の基準は「フジタスケール」として知られ、今でも広く使われている。
真にクリエーティブな科学者らしく、藤田の原動力は好奇心だった。若いころ、山に登って雷雲を調査しているうちに、冷たく湿った下降気流の存在に気づいた。
藤田はシカゴ大学の研究者が下降気流の計測を始めたことを知り、53年に渡米。シカゴ大学の研究員になった。
藤田の型破りな研究方法は論議を呼んだ。彼は飛行機から気象を観察し、直感でハリケーンなどの仕組みを推測した。その手法ゆえ、仮説が仮説で終わることも多かった。だが彼の超人的な勘は、気象学という新しい学問の進歩に重要な役割を果たした。
米大気研究所の科学者ジム・ウィルソンは98年、藤田の死を悼んでこう語った。「藤田は直感の人だった。普通の研究者が想像もしないようなことを思いついた」
藤田は71年、実際の被害の程度などをもとにトルネード階級表を考案した。気象学者らはすぐに、このフジタスケールを基準に採用。藤田には「ミスター・トルネード」の愛称が贈られた。
[2006年10月18日号掲載]