コラム

知られざる数億ションの世界(4)テレビに出るお金持ちの家に「生活感がない」と思ったら......

2022年09月06日(火)10時53分

思い返せば東京五輪の招致が決まった2013年以降、東京都心のマンションでは、そのような値上がりが起きた。当時、五輪後に下がるという意見もあったが、富裕層や不動産関係者は「下がるわけがない」と考えていた。

そこで、お金に余裕のある人のなかには、値上がりしそうなマンションを転売目的で購入する人たちが少なくなかったのである。

必ず値上がりしそうなマンション、なかでもひときわ大きく値上がりしそうなマンションを物色する......その様子は値上がりしそうな株を探すのに似ている。

さらに、めぼしい物件をゲットした購入者は、さらなる楽しみを見いだした。それは、購入した住戸に好みの家具を配置し、カーテンや絨毯で心地よい空間づくりをすること。つまり、センスのよいインテリアを配置して、マンション住戸の魅力を上げるわけだ。

このマンション住戸をインテリア込みで転売する。その際、価格上昇分を上乗せするだけでなく、買いそろえた家具やカーテン等の代金も上乗せする。

希望通りの価格で転売できれば、「よい物件を手に入れて、高く転売できた」だけでなく、「自分が手がけたインテリアが認められた」という喜びも得られることになる。つまり、二重に楽しめるわけだ。

なんとも優雅というか、贅沢な趣味だ。が、そんなことができたら楽しそう、と思う人は多いのではないか。

テレビで撮影OKとなる室内は......

数億ションのような超高級なマンション室内を番組内で紹介したい......テレビでそのような企画が持ち上がったとき、なにより大変なのが、撮影させてくれる住まい探し。家の中を見せて、と言われても、嫌がる人が多いからだ。特に、家族で生活している住まいでは、キッチンや浴室など、見せたくない箇所が多いものだ。

その点、転売目的で、インテリアを仕上げたマンション住戸ならば、見せて困ることはない。きっちりインテリアが仕上げられているし、使用していないので、汚れもない。自分で仕上げたインテリアをテレビで披露することもできる。そこで、「都内の某マンションで暮らすオーナー社長の住まい」などとして、登場することがあるわけだ。

それを見て、「なんてみごとに整理整頓されている住戸だろう」と思う人が多い......数億ションには、そういう状況も生じている。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏大統領、ウクライナ問題で結束「不可欠」 米への不

ワールド

ロシアとインド、防衛関係を再構築へ 首脳会談受け共

ビジネス

ソフトバンクG傘下のアーム、韓国で半導体設計学校の

ワールド

中国主席、仏大統領に同行し成都訪問 異例の厚遇も成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story