コラム

知られざる数億ションの世界(3)超高額住戸って、どれだけ広いものなの?

2022年08月16日(火)11時08分

1990年代の数億ションには、100畳大のリビングを備えた住戸もあった。筆者撮影

<10億円を超える高額マンションの広さは時代とともに変わってきた。かつて人気だった300〜400平米の特大住戸は何に使われたのか。今は120〜140平米が売れ筋になっている理由とは?>

新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ション、10億ションは、一般の住まいとは大きく異なる部分が多い。

なにより驚くのが、サイズの違いだ。

多くのファミリー世帯が購入する平均的2LDK、3LDKは60平米台、70平米台のものが多いのだが、当然ながら数億ションはそれよりずっと広い。

では、どれくらい広いのか。

不動産業界で語り継がれている「東京都内で最も広いマンション住戸」は、700平米を超えるもの。普通サイズの3LDKが10戸収まる広さだ。昔の広さ表記で200坪以上となるので、一般的な建売住宅の敷地6戸分以上となる。

■「知られざる数億ションの世界」第1回の「丸見えで恥ずかしい浴室が当たり前な理由」を読む
■「知られざる数億ションの世界」第2回の「照明がつかない住戸には大型金庫がある」を読む

もっとも、700平米住戸は、新築分譲時に複数の住戸をつなげた特注品。はじめから「700平米住戸」として売りだされたわけではない。

それほど大きいマンション住戸は、"既製品"として販売されたことがないのだ。

どうしても規格外の広さが必要なら、複数住戸をつなげることで、対応は可能。実際に特注する人が現れているので、そこまで広い住戸は用意されないわけだ。

では、数億ションとして分譲される"現実的な"広さとはどれくらいなのか。その答えは、「時代によって、変わるのだが......」という但し書き付きとなる。

20世紀までは多かった、300平米台、400平米台の住戸

数億ションには、「広くても、このくらいまでだろう」という基準というか目安がある。

それは、「400平米台まで」だ。

21世紀の初頭=いまから20年くらい前まで、都内における最上級マンション住戸には300平米以上あるものが多かった。そして、一部に400平米台住戸があった。

分譲マンションでは広くても400平米台までなので、「こちらには500平米超えの住戸もあります」という高額賃貸マンションが、それ以降にもつくられている。が、それはあくまでも特殊事例だ。

20年くらい前まで、300平米、400平米の高額マンションが盛んに分譲されたのは、日本に在留する外国人エグゼクティブたちが「ホームパーティを開くことができる住まい」を求めたことが原因だった。

当時は、ホームパーティのために100畳大クラスのリビングが必要とされ、パーティに供与される食事を料理人が用意するため、キッチンは20畳以上に。冒頭に掲げた写真がまさに、「100畳大リビング」のもの。1990年代に港区内で撮影した写真を改めて掲出しよう。

sakurai20220731152901.jpg
中央の広いスペースを中心に、向かって左側のスペースを加えて100畳の広さがあったリビングの例。35年以上前に港区内につくられたマンションだった。一眼レフカメラで筆者がフィルム撮影したもの

リビングが100畳大で、向かって右側の部屋は書斎として使うのがふさわしく約30畳大だった。

300平米、400平米の住戸には、巨大な玄関と、その玄関スペースに来客用として「着替えができる広さのトイレ」を設置するケースも多かった。

パーティに出席する女性は、露出度の高いパーティドレスを着用することがある。その派手なドレスで外を歩くわけにはいかないので、パーティ会場で着替える。そのために、「着替えができる広さのトイレ」が必要なのだと、その当時、初めて知った。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

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