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日経平均「ほぼ史上最高」を喜べない2つの理由
バブル期以来の株高は、景気のいい話のように聞こえるが Issei Kato/REUTERS
<今回の株高は日本の実体経済への寄与はほとんどなく、外国人投資家が「この先の円高」を見越して日本株を仕込んでいることが考えられる>
連休明け13日火曜の東京市場で、日経平均株価(225種)は一時1100円以上上昇し、取引時間中(ザラ場)の高値としては、1990年1月以来、約34年ぶりに3万8000円台を付けました。この日の終値は、3万8000円を少し下回ったものの、この勢いなら1989年12月29日の史上最高値(3万8915円87銭)を更新する可能性も指摘されています。
久しぶりに景気のいい話のように聞こえますが、冗談ではありません。この話題自体がちっとも喜べない内容だからです。2つお話したいと思います。
1つは、この「ほぼ史上最高値」という数字は、どう考えても「国際基準では評価できない数字」だからです。まず、ドル換算をして比較してみると、1989年12月のドル円は、1ドル=142円程度でした。ということは、今回の2月13日の水準である1ドル=149円強という数字よりは若干円高だったわけです。実際の「ドル建ての日経平均最高値」は89年末よりも更にもう少し後のタイミングとなっています。いずれにしても、ドルで考えた日経平均ということでは史上最高値にはまだもう少しあるということです。
そうは言っても、149円と142円ですから、89年当時と現在とではドル円の交換レートは大きな差はありません。問題は、世界の株が上場されているニューヨーク市場との比較です。1989年末の終値と、2024年2月13日の終値の数字を比較すると次のような数字になります。
▽ニューヨーク(ダウ) 2753.2ドル(1989年)>>>38272.75ドル(2024年)
▽ニューヨーク(NASDAQ)1106.53ドル>>>15655.6ドル
NYダウも、NASDAQもこの34年で約14倍になっています。東京市場がこの34年で「やっと株価を戻した」一方で、NYは14倍の成長を遂げているということを考えると、全く喜べません。
日本企業の収益が円安で「膨張」
2点目は、今回の株価上昇の理由です。日本の実体経済が上向きとなり、国内の消費や設備投資が活力を取り戻したからだとは「言えない」のです。単純化してしまえば、円安が大きな要因です。そして昔のように「円安だから輸出産業が好調」ということでもありません。
「トヨタなどの日本発の多国籍企業が、世界で稼いだカネが、円安が進むことで円換算では膨張して見える」
「海外に幅広く案件を持って投資をしている現在の日本の総合商社などの価値が、円安のために円換算では大きく見える」
「円安のため日本株が割安に見えるので、海外投資家が株を買う」
というのが理由です。多国籍企業や商社の場合、世界で稼いだカネを日本に還流させてくれれば、円経済での本物の景気に寄与するのかもしれませんが、実際は外国で稼いで外国で再投資されることが多い傾向があります。また、株主の多くが外国の投資家ですから、儲かったカネを配当すると結局は海外に流れてしまいます。
ですから、今回の株高は日本の国内経済への寄与はほとんどないと思います。そこまでのストーリーは当たり前過ぎて議論にもなりません。問題はその先です。
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