コラム

真鍋淑郎博士のノーベル賞受賞報道、2つの疑問

2021年10月13日(水)15時00分

私の住むニュージャージー州は、大西洋岸に位置するため竜巻の発生は少ないのですが、それでも9月1日にはFE0からEF3という強さの竜巻が複数発生して、被害が出ましたし、私の住む町でも2回にわたって避難命令が出ました。このアメリカ人の誰もが知っている竜巻の「EF」という階級(スケール)は、実は「エンハンスト・フジタ・スケール(拡張藤田スケール)」の略なのです。

拡張というのは、20世紀に藤田博士が確立した「F(フジタ)スケール」を、最大風速から判定される階級と被害のインパクトのズレを膨大なデータによって補正したアップデート版という意味です。藤田博士の没後である21世紀に入ってのアップデートにあたっても、「F」つまり「フジタ」の名前が変らずに使われているということは、博士の業績が今もなお評価されていることの証明だと思います。

日本の気象学の伝統

直接の師弟関係ということではありませんが、真鍋博士の前には、藤田博士の存在があり、そしてこれとは別に、20世紀の中期においては「雪の結晶の研究」で著名な中谷宇吉郎博士という存在があります。中谷博士は、あくまで北海道大学をベースに研究を続けた研究者ですが、アメリカの研究所で共同研究に従事していたこともあります。

日本の気象学の伝統としては、中谷博士の以前には寺田寅彦などの啓蒙活動があり、それ以前には江戸時代の『北越雪譜』など長い歴史があります。また現代では気象予報士がブームになるなど、風土に根ざした「気象文化」の広がりがあると言えます。真鍋博士の受賞は、長い歴史を持つ日本の気象文化をベースとしたものだと考えれば、もっともっと盛り上がってもいいと思うのですが、どうでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

AI発展の事業破壊リスクが最重要課題=ブラックスト

ビジネス

ノボノルディスク、今年の減益減収を警告 トランプ氏

ビジネス

スーパー・マイクロ、通期売上高見通し引き上げ サー

ワールド

民主党上院議員ら、ウォーシュ氏のFRB議長指名手続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 10
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story