コラム

コロナ感染拡大の中の東京五輪、閉会式はバーチャルで行うべき

2021年07月28日(水)16時00分

開催期間中も首都圏では感染の急拡大が止まらない Stefan Wermuth-REUTERS

<開催には賛否両論があった今回の大会だが、閉会式で説得力のあるメッセージを発信できれば評価は改善するかも>

アメリカでは今回の感染拡大を「第4波」という言い方で呼んでいます。ニューヨーク・タイムズのまとめによれば、7月26日の新規陽性者は5万6000人を超えており、14日前と比較すると44%の増加となっています。

私の住むニュージャージー州でも、一時は1日あたりの新規陽性者が100人以下まで下がったのですが、7月27日の発表では792人と増えています。この「第4波」の特徴ですが、全体が拡大傾向なのはデルタ株の感染力が強いという要因があります。また、ワクチン接種率の低い州での感染が深刻であり、それ以外の地域でも重症者の多くはワクチン未接種の人たちです。

バイデン大統領としては、7月4日の独立記念日までに、最低1回でもワクチンを接種した人の率を70%の水準にまで持っていって「ウィルスからの独立」を宣言するはずでした。また、これを前提にマスク義務化を止めて経済をフル稼働させつつあったわけです。ですが、接種率が急降下する中で「第4波」が拡大し、その目論見は外れた形です。

現時点では、少なくとも日本とアメリカに関して言えば、ワクチン接種が思うように進まないところを、デルタ株に「つけ込まれた」形で、現状に至っていると言えます。

開催中の中止の可能性も否定できない

そんな中で、東京では夏季五輪が進行中です。この大会ですが、菅総理は「中止の選択肢はない」などと、断定的な言い方をしています。ですが、この先仮に、

「東京の医療が逼迫して、五輪開催の都市間契約で約束された医療サービス提供が不可能」

となった場合や、

「選手村を中心に顕著なクラスターが発生し、開催都市東京の医療提供体制を逼迫させる」

という状況になった場合は、期間中における中止という可能性は排除できないと思います。

その一方で、仮にそこまで深刻な状況に至らずに、苦しみながらも踏みとどまる可能性もあると思います。その場合でも、決して「人類がコロナに打ち勝った」というような思い上がったメッセージは出せません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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