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ポスト・ゴーンの日産再編、カギになるのは北米日産
ということは、仮に日産の半分の価値しかないルノーが、必死になって日産を支配しようとするのであれば、それは北米市場が欲しいからだと考えられます。また、今後、日産とルノーの提携関係にヒビが入った場合に、日産に対して強引に買収提案などを仕掛けてくる勢力があるとすれば、それも北米日産が狙いだと考えられます。
北米日産は、かつては「ダットサン・サニー」などの小型車を、その後は「インフィニティ」などの高付加価値車を日本から輸出して事業を伸ばしてきました。ですが、現在の姿は異なります。開発機能やデザインセンターなども北米に移転しており、製造販売も含めて現地により根ざした企業に変貌しているのです。
そこで気になるのが、ゴーン氏と一緒に逮捕されて、昨年12月に保釈されたグレッグ・ケリー氏の存在です。ケリー氏は、現時点では法廷対策に専念して沈黙を守っていると考えられますが、内心は日産と日本の司法体制に対して強い不快感を持っていると推測されます。
そのケリー氏は、ゴーン氏のように「ルノー側から送り込まれた人材」ではありません。そうではなくて、北米日産の叩き上げです。ケリー氏は元々弁護士でしたが、32歳の時点で北米日産の法務部門に入社します。そこから人事部門に転じて、おそらくは組合対策や人件費の管理などをやって北米日産の責任者をやり、さらに日産の役員として全世界の人事を統括していました。
ということは、人事と法務を中心に日産全社と北米日産の歴史について、オモテもウラも知り尽くした人物である可能性があります。そのケリー氏が、名誉回復を行うために、自分の経験と能力を生かそうと考えるならば、日本での法廷闘争には何とかケリをつけた上で、例えばですがライバル企業に駆け込んで日産の買収を狙うなどの逆転劇を狙うかもしれません。その結果として、日産はルノーの支配は免れても、別の外国勢力に支配されてしまう、そんな可能性を排除できません。
これを避けるには2つの方策があると思います。
1つは、検察、日産、ケリー氏の三者が何らかの和解を模索するという方法です。金銭だけでなく、ケリー氏の名誉も回復するような和解を、検察のメンツを多少潰してでも可能にするような「連立方程式の解」を強引に作ってしまうという考え方です。
もう1つは、日産として「買収される危険」を避けるためにも、そして自動運転やEV化による変革期を乗り切るためにも、率先して新たな企業連合を目指すという方向性です。
ルノーに買われるのではなくルノーを買う、ダメなら他の欧州勢、あるいはシリコンバレーの勢力の1つ、さらにはアジアの他の勢力などとの提携もしくは買収を積極的に進めて、北米日産を他のグループに奪われることのないように攻め続けるべきです。ゴーン氏の事件は、ポスト・ゴーンの日産グループの姿をどう構想するかという段階に入ってきました。
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