コラム

2025年の大阪万博は1970年の万博とは様変わりする

2018年11月27日(火)18時00分

高度成長期の1970年に開催された大阪万博では、日本人の来場者がほとんどだった danieldep/iStock.

<前回の大阪万博は日本人入場者が主だったが、2025年の万博は想定される入場客から違ってくるはず>

2025年に大阪市の夢洲(ゆめしま)で万国博覧会が開催されることが決まりました。大阪万博と言えば、今から48年前の1970年に千里丘陵で開催された万博が歴史に残っています。何となく、同じようなイベントになり、大勢の日本人が行列を作ったり、日本企業や外国政府のパビリオンがたくさん出来たりするような想像をしてしまいますが、実際の展示内容はどうなるのでしょうか。

おそらく、2025年の万博は、1970年とは似ても似つかないイベントになると考えられます。また、そうでなくては成功しないのではないでしょう。

まず1970年の主要な来訪者は日本人でした。資料によれば日本人が6400万人で、外国人は170万人だったそうですから外国人比率は2.5%程度でした。

ですが、2025年は違うと思います。夢洲のすぐ近くにあるUSJの場合、現在の来訪者数は公表していませんが、ほぼ1800万人程度で外国人比率は15%から20%と見られている。これを参考に考えると、2025年の万博は外国人比率30~40%になるのではないかと予想されます。

また、高額なチケットを購入でき、混雑の中を歩き回れる人口ということでは、日本人の数は減少の一途となる時期ですから、もしかしたら外国人比率は50%以上になる可能性もあるでしょう。むしろ、そのように想定しないと、イベントとしての成功は難しいのではないでしょうか。

そうなると言葉の問題が出てきます。1970年の場合は、主として日本人のための万博でしたから日本語で事足りました。一部英語表示があったり通訳が活動したりしていましたが、2025年の場合はまったく違うでしょう。2025年の万博では、日本で開催されるイベントではありますが、英語が公用語になると思います。

パビリオンの構成も変わるはずです。1970年には、多くの国や地域が「日本人に世界を知ってもらう」ために参加してきました。また、それは海外旅行熱に浮かされた日本人、海外進出を狙っていた日本企業向けのマーケットの開拓という意味では、十分に意味のある参加でした。

ですが、2025年の日本ではおそらく海外旅行ビジネスは縮小しているでしょうし、企業の多くはすでに海外に出て行ってしまっています。そこで、政府館ということでは、ひたすらに「外国人に日本を知ってもらう」という企画が中心になると思います。

企業の参加ということではどうでしょうか? 1970年の場合は、多くは日本企業でした。日本企業にとって市場としての日本はまだ重要でしたし、人材確保も含めて日本国内でのPR活動には大きな予算を使うことができたのです。

ですが、2025年の場合、多国籍化した日本企業にとって、縮小の一途をたどる日本市場は魅力的ではありません。アジアなど世界から来る人々向けのPRということでは有効になると思いますが、多くの日本の製造業がB2B(法人向けビジネス)にシフトしている現在、あまり活発な参加は見込めないと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story