コラム

デトロイト・モーターショーは手動運転の「終わりの始まり」?

2018年01月16日(火)16時35分

デトロイト・モーターショーでは自動運転車に関する大規模な展示とシンポジウムが行われた Mark Blinch-REUTERS

<今週デトロイトで開幕したモーターショーを皮切りに、世界各地で自動運転の実用化に向けた環境整備の議論が進んでいるが、日本の官民の動きは全体的に鈍い>

毎年、新しい年が明けるとアメリカは自動車見本市のシーズンを迎えます。北部を中心に寒さの厳しいこの時期ですが、冬のうちに新製品を発表したり、企業間の提携関係を確立したりして、需要の拡大する春から夏に備え、また多くの企業が1月から新年度に入ることから、1月から2月に多くの見本市が開催されるのです。

有名なのは、1月第2週に行われた「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」で、こちらは温暖なラスベガスで行われましたが、第3週の「デトロイト・モーターショー」は厳寒のミシガン州デトロイトで開催されています。このショーは、世界の自動車ショーの中でも最も著名なものの一つで、日本でも大きく報道されています。

日本の報道では、今回のショーの目玉は「メルセデスベンツGクラス」の新型車発表だったり、日産のクロスオーバーSUVの発表、あるいはホンダの「アコード」が「北米カー・オブ・ザ・イヤー」に選出されたというニュースが主となっています。

その一方で、このデトロイト・モーターショーの中では、「auto MOBILI(D)、オート・モビリディー」(モビリティとデジタルのDを掛け合わせたもの)と銘打って、IoTとAIを使ったAV(自動運転車)に関する大規模な展示とシンポジウムが行われていたのでした。

この年初から、自動運転に関する見本市やシンポジウムは、全米で、そして世界中で行われているのです。例えば、ラスベガスで行われたCESでも、自動運転車に関するイベントは毎日のように行われており、例えば「技術開発のロードマップ」の討議や、巨大保険会社のAIGが主催した「自動運転時代の自動車保険」に関するシンポジウムなどが行われていました。

例えば、1月30日からはシンガポールで「アジア自動運転車シンポジウム」というイベントも開催されます。

参加者は世界のIT企業と各国の交通官僚などで、テーマとしては「自動運転時代に必要な社会制度のロードマップ」「自動運転に関わるデータのセキュリティ」「自動運転の最新技術」「自動運転の社会的受容を目指して」「公道への自動運転車受け入れインフラに関する討議」といった内容で、まさに自動運転時代を切り開くための社会改革について、当事者である関連企業と、各国の監督官庁などが知恵を集める場になるのだそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story