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21世紀版『美女と野獣』で描かれる現代の女性像
エマ・ワトソンはヒロインのベルを知性溢れる女性として演じた Neil Hall-REUTERS
<女の子向けラブストーリーの王道的作品とも言える『美女と野獣』の中にも、製作された時代を反映した女性像が描かれている>
ディズニーの『美女と野獣』実写版リメイクが大ヒットになっています。先週16日の先行上映も相当な動員数だったようですが、最終的に先週金曜から日曜までの「オープニング・ウィークエンド」の興行収入は1億7400万(約196億円)に達したようで、これは「歴代7位」という記録的な数字だそうです。私は正式な封切り日である金曜の早い時間に行きましたが、夜の時間帯では多くのシネコンで「売り切れ」が出ていたようです。
多くの批評サイトの反応も好意的ですし、いつもは辛口のニューヨーク・タイムズも「インスタント・クラシック(出てすぐに古典になった)」という相当な表現で褒めていました。一部ネガティブな意見もないわけではありませんが、「91年のアニメ版(本作のオリジナル)に及ばない」とか「あまりに売れ線狙いであざとい」「エマ・ワトソンはいいが、他が弱い」というような「斜に構えた」ものが主のようです。
ヒットの理由ですが、何と言っても主役のベルをエマ・ワトソンが演じているということが大きいと思います。キラキラした知性が、大変な好感度を生んでいるということもありますが、『ハリー・ポッター』シリーズのヒロインだった彼女と一緒に育ったミレニアル世代を中心に、アメリカ人は完全に心を奪われた感じです。特に、女の子のいる家庭の「のめり込み」は相当なものですし、これからさらに現象が拡大していく感じもあります。
【参考記事】英国の緊縮財政のリアルを描く『わたしは、ダニエル・ブレイク』
そのワトソンですが、アイビーリーグの名門校ブラウン大学を卒業したこと、そして「アクティブ・フェミニスト」を自称していることは有名です。では、その彼女の思想と、この作品はどう結びついているのでしょうか? この『美女と野獣』ですが、「女の子向けのロマンチック・ラブ・ストーリー」であることは間違いありません。と言いますか、その王道を行く作品だとも言えるでしょう。
ですが、そこに一種の「穏健なフェミニズム」が入っているということは、91年のアニメ版の当時から言われていることです。ベルという主人公が、まず「本好きな少女」であり、同時に「自分の信念を貫く」強さがあり、さらには「交際相手となる男性を外見では判断しない」という本作の「核」にある設定で、自立した女性像を描いているからです。
ネタバレになりますが(大変に有名なお話ですからお許しください)、その一方で、結末の部分で野獣が元の王子様に戻ってしまう部分が、一種の保守性だと批判されたのは事実です。その点を突いたのが、ディズニーのライバルである、ドリームワークス・アニメが作った『シュレック』(2001年)というパロディです。『シュレック』の場合は、野獣がイケメン王子に「戻る」のではなく、「美女」の方が野獣に化けて「野獣カップル」になるというわけですから、まさに本作の完全なパロディというわけです。
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