コラム

大学入試改革を成功させる「3つの鍵」とは?

2014年12月26日(金)12時50分

 では、この改革を成功させるためにはどんな点に留意したらいいのでしょうか? 年末年始にこの問題を考えるために「3つの鍵」を提示しておきたいと思います。

 1つ目は、学力は絶対に死守するということです。そのためには「大学入学希望者学力評価テスト」は思いつきの「合教科、総合型」を主としてはダメです。特に数学は現行の数学1ではなく2まで「絶対に要求すべき」です。経済や理工学系、医学・薬学系の場合は「数学3」までやるべきです。理科は中途半端な統合科目ではなく「物理1、化学1、生物1」の全領域を理解しているかをしっかり検証し、特に理工や医学・薬学系の場合は「物理2、化学2、生物2」まで要求すべきです。そうでなければ高大接続教育が更に崩壊することになるからです。

 2つ目は、面接は民間企業の卒業生、官庁の卒業生、学究肌の研究者、保守的な思想の持ち主、左派的な思想の持ち主、欧米的な観点の持ち主、アジア的な観点の持ち主など「多様な観点」を持った面接官が合議で行うようにすべきです。日本というのは、価値観が良くも悪くも多様な国であり、抽象価値の操作力を評価する際に、評価者の主観を排除することはそもそも無理であるからです。ならば、多様な観点を総合して全体のバランスを保持するのが現実的です。また、設問は学生の履歴書の内容をベースに個々にランダムかつ柔軟な設問を機動的に投げるべきであり、妙な公平性にこだわって同じ質問を投げた結果、想定問答が横行するような事態は避けるべきです。

 3つ目は、ゆとり教育の失敗に鑑みて、新しい入試の判定基準が示す「期待される能力」をキチンと教えられるように、高校以下の指導法を180度変革すべきです。例えば日本の授業では「授業中に質問する」カルチャーはありません。教師が一方的に「決められたこと」を教える、つまり教える内容には「予め答えが決まっている」という硬直性があり、また「熱心に質問する」ような学生は「偉そうに見えて他の学生の自尊心を侵害する」などという「めんどくさい」カルチャーもあります。そうした沈滞は国家社会の老化退廃に他ならず、それを打破して、小中高の授業自体に「本質的で闊達なコミュニケーション」を育んでいく、それが「抽象概念を操作するスキル」を訓練する近道です。

 いずれにしても、大学入試を180度変革するのであれば、その変革が成功するように本腰を入れるべきです。学力試験が骨抜きになり、面接では想定される質問しか出ないために「意識高いです」的な「口舌の徒」だけが評価され、しかも高校以下の教育が変わらないために「傾向と対策」を掲げた塾や予備校が繁盛するようでは、改革は失敗し、日本の中高等教育全体が壊滅的になる危険があります。

 ちなみに、今回の答申が参考にしたと思われるアメリカの大学入試制度に関しては、拙著『アイビーリーグの入り方』(CCCメディアハウス刊)で詳しく紹介しています。日本の大学入試制度について考える上でも参考にしていただけると思います。

≪著者からのお知らせ≫
年明けの1月30日(金)17時より「アルファ・アカデミー渋谷キャンパス」にて「アイビーリーグ校、準アイビー、リベラルアーツ校合格を目指す高校生・中学生のための特別講演会」を行います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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