コラム

「中国ATM」から援助を引き出すパスワード

2017年02月28日(火)11時40分

<ダライ・ラマを招待しないと表明しただけで多額の援助を中国から引き出したモンゴル。中国政府から金を出させるには、「偉大なる中華」の権威を承認するだけでいい>

昨年11月、チベットの精神的指導者ダライ・ラマ14世がモンゴルを4日間訪問したことが中国共産党の不興を招いた。中国外務省はモンゴルにダライ・ラマを受け入れないよう求めたが、モンゴル仏教の指導者はダライ・ラマの訪問が全くの宗教目的であり、政治と無関係だと反論。共産党はこの説明を受け付けず、両国の外交関係は急速に冷却化した。2国間の会議は無期限延期となり、経済協力も一時停止した。

しかし共産党はモンゴルの存在を無視できず、経済危機のモンゴルにとっても中国の投資と貿易は重要だ。結局、モンゴルは共産党に屈服した。外務大臣のムンフオリギルはダライ・ラマ訪問の影響が宗教の範疇を超え、モンゴルと中国の関係に悪影響が生じたと認め、ダライ・ラマをモンゴルに招待しないことを受け入れた。現在の政権の任期内は、宗教の理由であってもダライ・ラマはモンゴルを訪問できなくなった。

この後、2月20日に中国の外務大臣である王毅は北京を訪れたモンゴル外相と会見。中国はあっさりと総額55億ドルに上るIMFの対モンゴル援助計画に参加することを表明した。中国の負担額は22億ドルだ。

ダライ・ラマを今後招待しないだけで、モンゴルが中国から22億ドルの気前良い援助を獲得したことを、中国のネット利用者は不満に思っている。中国の民衆はここ数年、ある国家が「1つの中国」あるいは「釣魚島が中国のもの」と認めるだけで、あるいはダライ・ラマ訪問を拒絶しただけで、政府がすぐに大量のカネを払ってきたことに気付いている。

共産党の対外経済投資・援助に対する考えは、中国古代の皇帝と何ら違いがない。周辺の小国が贈る貢ぎ物そのものの価値は重要ではなく、「偉大なる中華の国」のこの上ない権威を承認するだけで、皇帝から比類なく手厚い恩賞が贈られたのだ。

現在、もし共産党の手から巨額の援助を獲得したかったら、どうするべきか。簡単だ。まず海外で小島を買い、新国家を樹立。国家元首になって、共産党に対してお金を引き出すための「パスワード」を1つ1つテストするのだ。「1つの中国」「釣魚島は中国のもの」「ダライ・ラマを招待しない」......。「パスワード」が分かれば、彼らからいつまでも援助を引き出すことができる。

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発、ホルムズ海峡巡る過度な警戒感が後退

ワールド

仏韓、防衛協力強化・エネ安保で連携 首脳会談で合意

ビジネス

アングル:ネットフリックス、ワーナー買収失敗でオリ

ビジネス

午後3時のドルは159円後半でもみ合い、欧米休暇前
今、あなたにオススメ
>
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 7
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 8
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 9
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story