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口に出すだけで社会が変わる魔法の言葉とは?(パックン)
建国の時代よりも、月面着陸の時代よりも、80年代よりも今の社会が男女平等に近づいているのは偶然ではない。言葉遣いを変えることこそが、意識を変えること、世の中を変えることになる。その効果は実証済みだ。
次はトランスジェンダー、ジェンダーフルイド、エイジェンダーの番だ。確かに、男・女のときよりも、社会を変化させるのは難しいかもしれない。「女性にも男性と同じ機会を、同じ扱いを!」という考え方で男女平等を進めることができたが、それでも男・女の区別自体ははっきり残っている。
一方、トイレ、スポーツ、婚姻制度など、主に「二択」しかない分野でこの「二択」がうまくあてはまらない方々をどう扱うかは大変難しい。「その他」の枠を作ることは可能だが、それで対等な構造になるとは考えにくい。(ちなみに昔、パックンマックンが司会の番組が新聞のテレビ欄で「出演:パックンその他」と記されたとき、マックンはかなり、もとい少し不平等感を覚えたそうだ。ご参考までに)。
しかし変化が難しいとはいえ、インクルーシブ(包括的)な社会を志すなら、挑戦するしかないだろう。第一歩は言葉遣いから意識改革を促すことだ。そのため、アメリカでは夫・妻ではなくspouse(配偶者)、息子、娘ではなくchild(子供)などと、ジェンダーフリーな表現を意識的に使う人が増えている。he/she(彼・彼女)のように性別が盛り込まれている代名詞が当てはまらないときはtheyで対応する。
性的指向を口に出すのが普通に
今や初対面で「こんにちは、パトリックです。僕の代名詞はheです」と、好みの代名詞込みで自己紹介する人も多い。生まれた性別、見た目の性別、内面の性別がどれも一緒の「普通な人」もそうする。すると、そうじゃない人も続いて「こんにちは、太郎です。私はsheでお願いします」と、気楽にアイデンティティーを伝えることができるのだ。僕の近くにも特定の性別を名乗らない人がいて、こうした言葉遣いや自己紹介は一瞬戸惑ったけど、自分でもトライしてみたら意外とすぐ慣れて、自然に感じるようになった。
ニュースの原稿はしばらく仕方ないだろうが、一個人として私生活上で人の見た目から性別を判断せずに本人の気持ちを確認するように心がけるようにはできる。一人ひとりの努力次第で少しずつ世界が変わると、僕は信じている。
ところで屁理屈と言えば、昔の日本の英語の教科書はI am a boy. She is a girl. This is not an elephant. This is a telephone.(私は男の子です。彼女は女の子です。これは象さんではなく、電話機です)といった具合に「見てわかるだろ! それわざわざ言うこと...?」と突っ込みたくなる例文が多かったよね。でも今後は自ら性的なアイデンティティーを口に出し確認するのが普通になるかもしれない。やっとI am a boyが役に立つ時代が来た! それでも象さんと電話機は見間違わないだろうけど。
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