コラム

日本は大坂なおみの二重国籍を認めるべき!

2018年09月25日(火)14時45分

日米二重国籍の大坂なおみは、22歳までにどちらかの国籍を選ばなければならない Toru Hanai-REUTERS

<*今コラムは2018年9月の掲載時、国籍に関する日本の法令について筆者パックンおよび編集部の理解が不足していたため、「日本は二重国籍を認めない」という間違った認識で書かれています。詳細は最新コラムにて説明していますので、そちらをお読みください。>

残念なお知らせです。大坂なおみ選手は日本代表でオリンピックに出ません。

すみません。少し言い過ぎました。お知らせではなく予想、残念な予想なだけです。
 
ちょっと変な予想だけど、この読みには自信がある。残念な自信はある。

理由は簡単。IOC(国際オリンピック委員会)のルールとして、アスリートは国籍のない国の代表選手になれない。そして、日本のルールとして、外国籍を有するものは日本の国籍を有せない。法律上、アメリカ人の父と日本人の母に生まれ日米二重国籍の大坂選手は、22歳になるまでに1つの国籍を選び、もう1つから離脱しないといけない。来年10月16日の誕生日を迎える前に選択を迫られるのだ。国籍というバースデープレゼントが選べると思えばいいかもしれない。

そこで大坂選手は、残念ながら、アメリカを選んでしまう。

すみません。また言い切っちゃったが、予想です。悲しい予想なだけです。

国際結婚で生まれた一般の人ならば、黙っておけば両方の国籍を持ち続けることが可能だといわれる。原則として禁止でも、取り締まりも、法的な罰則もない。蓮舫さんのように話題に上がらなければ、外国の国籍を放棄することは「努力義務」で終わり、強制されないものだ。実際問題、そんな「隠れ二重国籍保有者」は多いようだ。知り合いのハーフの人でも、僕を信用して、その状態であると教えてくれた人が数人いる。その状態であっても、僕を信用しないで教えてくれない人はもっといるだろう。

でも大坂選手は有名人だし、日本代表候補。全国民が彼女の選択に注目していて、黙ってスルーすることはできなさそう。違法状態はスポンサーも許すまい。ましてや、なおみちゃんは純粋でちゃんとやりたいタイプ。ズルなんかしない!

これもまた勝手なイメージにすぎないけど、きっとそうだ。

じゃ、アメリカ国籍なんか捨てて日本を取ればいいだろう!

そう思う。僕もそうしてくれることを願っている。でも、大坂選手が純粋な性格であっても損得計算をするはずだ。ここで僕らもしてみよう。

まず、日本国籍にするメリットを考えよう。大坂選手の場合は、日本企業から莫大なスポンサー料がもらえるなど特別な利点ももちろんあるが、この文化、社会、歴史、未来においても素晴らしい日本の一員になれる、ということが一番のメリットだ。国籍があれば、日本で仕事もできるし、仕事をしていなくても日本にいられる。投票ができる。大好きな日本にフルで参加できる。日本人でいれば、世界中の人に好かれるし、世界中の子供から忍術ができると思われる。いいことずくめだ。

(日本国籍は本当に魅力的。心からそう思っている。この話題においては冷静沈着に分析しているつもりだが、僕のバイアスは必ず見え隠れするだろう。むしろ隠さずに本音をはっきり言おう。日本の国籍がほしい。忍者になりたいし)。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロ産原油、割引幅1年ぶり水準 米制裁で印中の購入が

ビジネス

英アストラゼネカ、7─9月期の業績堅調 通期見通し

ワールド

トランプ関税、違憲判断なら一部原告に返還も=米通商

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story