- HOME
- コラム
- パックンのちょっとマジメな話
- 過剰反応はダメ、ゼッタイ
過剰反応はダメ、ゼッタイ
フランスは今、テロに対する怒りと悲しみに包まれている Guillaume Horcajuelo-REUTERS
Solidarité!
この悲しみを共有し世界中で団結しよう。そういった強い意志を示す声が世界各国から挙がっている。僕も心からお悔やみを申し上げます。そして一緒に平和な世界作りに貢献することを誓います。
僕にできることは、ここで議論の材料を提供すること。そしていつものギャグを我慢すること......今回だけだよ。
テロの効果は、受ける側の反応次第。何千年の歴史を持つ「テロ行為」は、相手に恐怖を与えることで、ほかの手段で得られないほどの大きな反応を引き出すことが目的なのだ。恐怖を感じた側が、普段の行動を控えるのも、必要以上に軍事的な対応をするのも、テロ犯の目標達成につながる。だからテロが起きたあと、テロリストの狙いを把握して、それを達成させないように努めるのが賢いレスポンスだと思う。テロ被害を受けたときは、悲しみながら、怒りながらも、テロ犯が冷酷な分だけ、こちらもよく考えて、冷静に反応しなければならない。
パリで起きたテロ事件を分析すると、その狙いがいろいろと見えてくる。単純に、サッカースタジアムやコンサート会場を攻撃したことで、市民の楽しみを奪い、行動を制限しようという意図が見られる。また同時に、バーやレストラン、カフェなどのソフトターゲットを襲うことで、市民の生活が麻痺状態に陥ることも狙っているのだろう。ありきたりなテロの常習手段だ。
しかし、なぜ今回の攻撃相手をパリに定めたのか? 「空爆の報復だ」と言うなら、空爆の80%以上を行っているアメリカを攻撃するのが筋だろう。パリを選んだという意味は、今回のターゲットオーディエンスはフランス国民に限らないということ。
パリだと世界の注目度が断然違う。フランスへのテロ攻撃の一方で、その前日にはレバノンでも同時多発自爆テロで43人が命を落としている。もちろんこのコラムの読者はご存知だと思うが、大きく取り上げられた前者と比べ、後者の世界的な認知度は低いだろう。パリであれば、世界中の目をひきつけることが可能だということ――犯人たちもその「宣伝効果」を意識していたと思われる。
もちろん、世界各国からの観光客が渡仏をためらう心理効果も狙っているだろう。年間8000万人もの旅行が訪れるフランスでは、観光産業がGDPの10%ぐらいを占める。攻撃が起きたのが観光地じゃなくても、世界の観光客がパリを避けることにつながる。結果として、他の国よりも甚大な経済損失をテロにより被ることになる。
さらに、容疑者の遺体の近くからシリアのパスポートが見つかったことから、シリア難民に対する恐怖を煽る狙いもあったのかもしれない。容疑者本人のものではなく、「見せかけ」の可能性もある。どこまで犯人が計算していたのかはわからないが、「テロリストが難民に紛れ込んでいる」とヨーロッパ各国に思わせたい狙いも考えられる。ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)から見れば、難民問題で西洋各国が苦しむことも、ヨーロッパ人とイスラム教徒が対立することも、両方望ましいことなのだ。さらに、イスラム教徒が難民生活で長く苦しむことは、思想の過激化を助長する。これも、ISISにとって有利に働くのだ。
トランプを再び米大統領にするのは選挙戦を撤退したはずのケネディ? 2024.09.19
トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に? 2024.08.06
討論会惨敗の米民主党がここから「仮病」で大統領選に勝つ方法 2024.07.01
謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わない理由 2024.06.11
新生活の門出にパックンが贈る「ビーカーの尿、バイアグラ、厚切りジェイソン」の教訓 2024.04.04
日本で「外国人を見た目で判断する」ことの弊害が噴出中 2024.03.16