コラム

警官を見たら殺し屋と思え? アブなすぎるアメリカの実態

2015年06月25日(木)12時40分

 先日ワシントンポストが独自の調査で、全国の警察による射殺事件のデータをまとめて発表したんだけど、そこでとんでもない数字が出た。
 
「3 8 5」

 これは警察に射殺された人数の合計だ。

 さてここで問題。この385人はどれぐらいの期間の死亡者数に当たるだろうか。
  A)10年
  B)5年
  C)1年

 正解は......D。今年に入ってからの5カ月間の数字だ!!!

 たった5カ月で、385人もの民間人が警察に射殺されている。計算するとこれは1日に2.6人が殺されているペース。このままだと、年末までに1000人近くが命を落とすことになる。

 さらにすごいのはその内訳。撃たれた人の中で、銃やナイフを持っていた人が大半を占めているのは確かだが、まったく武器を持っていない人も、なんと62人もいる。全体の16%だ。しかも、武器を持っていない上に、逃げようとして殺された人は16人もいる。

 丸腰の人が逃げようとしている状況は、警察官にとって何の脅威もない状況のはず。自己防衛というのは苦しい言い訳だろう。

 しかし、警察官の間にはfoot tax(足税)という表現があるらしい。「逃げると高くつく」という意味だ。命が代償の税金は高すぎる。

 また内訳の中に、犠牲者の人種に関するデータもあった。385人が死亡した事件を、発生エリアの人口比に照らし合わせると、さらに驚きの事実が。なんと、黒人が射殺される確率は白人の3倍の確率だということがわかる。

 足税もかなり頂けないが、こんな「肌税」はもっと許せない。

 こんな実態が少しずつアメリカ国民に周知され、警察が批判の的になっている。一方で、「警察は毎日危険な現場に触れているから仕方ない」と擁護する人もいる。

 間違いない。警察官が命がけで犯罪者を取り締っているのもまた事実。大変な仕事であり、一般市民はその恩恵を受けている。

 僕の弟も警察官。家族が皆、彼のことを心配しているのもまた事実ではあるけれど。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story