コラム

NY在住の大江千里が明かす、不思議な感覚を生むコロナワクチン接種体験

2021年02月06日(土)12時30分

1月10日に利き腕の左腕にモデルナ社のワクチンを接種した大江氏

<1月10日にモデルナ社の新型コロナワクチンを接種した大江氏。長蛇の列を経てワクチンを接種した先に見た、新しい世界とは――>

マンハッタンに再び陽が昇り始める。ニューヨークは感染者が急増し、健康診断や予防接種で病院に行くたびに深刻な様子をじかに感じるようになった1月9日、僕の元にニューヨーク市から携帯メールが届いた。明日から自分もワクチンが無料で打てるというのだ。

送られたアドレスから登録をしたら、翌日の12時20 分の予約が取れた。「たとえ10分でも早くには来ないで。必ず時間どおりに来てください」という注意書き。

翌日、接種場所である小学校へ時間ちょうどに行ったら大変な列ができていた。2キロくらいだろうか。後ろのほうの男の子に聞くと「俺は11時の回だよ」という。これは2時間待ちだなと覚悟を決める。

「5時間コースだね。ばかばかしい」。そう吐き捨てるように言って離脱する人もいた。しかし、ほとんどの人が従順に列に並び続けた。老若男女のボランティアの案内人がみんな素晴らしく、「寒くない?ハッピー?」と寒空に並ぶ僕たちを励ましてくれる。まるでロックコンサートのアリーナ席に並び合わせているような連帯感がある。

ワクチン接種を終えた人たちがドアから出てくるのが見える。まるで別の惑星から来た異星人のようだ。僕らも、ああいうふうにあのドアから出てこられるのか。結局、思ったほどは待たずに2時間弱で学校の中へ入れた。

いざ、接種テーブルへ。会場はバスケットコートだ。僕の担当はアジア系の看護師さんだった。ファイザー社とモデルナ社のものがあり、僕の場合は申し込む際に自分の意思で選べたのでモデルナにした。

和やかな話をして気持ちをリラックスさせてから利き腕を差し出す。1本は結構な量に見えたが一瞬の注射で入ってしまう。

ワクチンによって体に入るのは病原体の遺伝情報で、体内に抗体が作られる。コロナウイルスが侵入しても、「先客」の抗体によって免疫ができてしまっているので悪さができないそうだ。発症や重症化を防ぐのには役立つが、人への感染予防効果ははっきりとは確認できないといわれている。

プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米エヌビディア、H20輸出制限を一部中国顧客に伝え

ビジネス

中国が通商交渉官を交代、元WTO大使起用 米中摩擦

ビジネス

日銀、5月20ー21日に債券市場参加者会合 中間評

ビジネス

市場は米への信認疑問視、トランプ関税で=経済同友会
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story