<インドの巨大な繊維工場を圧倒的な映像美で描いたドキュメンタリーから見えるもの>

ニューデリー出身の新鋭ラーフル・ジャインが作り上げたデビュー作『人間機械』は、インド北西部グジャラート州にある巨大な繊維工場を舞台にしたドキュメンタリーだ。

カメラは冒頭から、迷路のように複雑に入り組む空間を進み出し、私たちを工場の内部へと引き込んでいく。古びた建物のなかには、生地を染色加工するための様々な機械が並び、耳をつんざくような音をたてている。労働者たちが、染料を準備し、生地を担いで運び、それぞれの持ち場で機械の動きに合わせて作業をつづける。

途中に挿入される労働者へのインタビューから、彼らの多くが、仕事のない州からやって来た出稼ぎ労働者で、低賃金で12時間労働していることがわかる。労働者のなかには子供も含まれている。カメラは、作業中に何度も睡魔に襲われる少年の姿もとらえている。

人間と機械と生地が有機的に結びついたカメラワーク

ジャイン監督が、格差や劣悪な労働環境を告発しようとしていることは間違いないが、決してそれだけではない。プレスに収められた監督インタビューによれば、グジャラート州のこの地域には1300軒ほど工場があり、舞台となった工場はそのなかでも一番よいと言われているものだという。もし告発だけが目的であるなら、映画にそんな情報を盛り込んだほうが効果的だし、もっと劣悪な工場を選ぶこともできたはずだ。

だがジャインは、具体的な情報を登場する人々の発言だけに限定し、まずなによりも目の前にある状況を観察しようとする。そこからは圧倒的な臨場感が生み出される。さらに、巧みなカメラワークと緻密な構成によって、人間と機械と生地が有機的に結びつき、一体となった光景が浮かび上がる。

インドの不平等の特殊な性質

では、ジャインはそんな独自のアプローチでなにを表現しようとしているのか。アマルティア・セン/ジャン・ドレーズの『開発なき成長の限界――現代インドの貧困・格差・社会的分断』には、それを理解するヒントがある。本書では、インドの不平等の特殊な性質が掘り下げられている。

富裕層と貧困層の間の隔たりが非常に大きいのは中国も同じだが、そこには経済的不平等についての標準的な指標を比較するだけでははっきり見えてこない違いがある。たとえば、教育や保健医療といった公共サービスの役割は、個人所得についての指標では考慮されていない。

「インドに暮らす人の多くは、それなりによい学校、利用可能な病院、家に備え付けのトイレ、一日二回のまともな食事といった生活上の基本的な要件を欠いているが、中国のような国ではこうした状況は見られない」

「多様な側面を持つインドの不平等は、不平等それ自身が解消されないような仕組みを生み出す傾向にあり、特に公共的議論やメディアの報道に見られる歪みを通して引き起こされる」

不平等、階層化、カーストによる分断、忍耐を美徳とする伝統、偏った公共サービスやメディアといった様々な要素が絡み合い、貧しい人々が排除されていくインドの現実。それをとらえるためには、独自のアプローチが必要になるだろう。

インド人を縛り付ける「鳥籠」