仲裁裁判所の判断が中国を追い詰める
中国は、国連海洋法条約を根拠にすることを避けてきた。フィリピンが仲裁裁判所に提訴したことに対して強烈に反発したのも、中国の主張が通らないことを理解していたからに他ならない。中国は、自らが弱い領域では戦わないのである。
しかし今回の「判断」では、「歴史的権利」まで証拠がないとして否定されてしまった。さらに中国が受け入れられないのは、南沙諸島の中で高潮時にも海面上にその一部が出ている陸地についても、「全て島ではない」とされたことである。島でなければ、領海は設定できても、排他的経済水域は認められない。「中国には、海底資源等に対する権利はない」と言われたのである。
その上、南沙諸島にあるミスチーフ礁等は、高潮時に全没するため、「岩」でさえないとされた。「島」でも「岩」でもなければ、そこは領土ではなく、領海も設定できない。中国がすでに人工島を建設したミスチーフ礁等は、フィリピンの排他的経済水域の中にあり、中国にはいかなる権利もないとされたのである。
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国際的な司法機関によって、中国の南シナ海における権利が、根底から否定されてしまったのだ。中国からしてみれば「受け入れられない」結果だろう。これに対して中国外交部は、直ちに、「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」を出し、「中国人は、南シナ海で2000年以上活動してきた歴史がある。中国は南シナ海の島々と周辺海域を最も早く発見して命名し、開発していて、最も早く持続的、平和的、かつ有効に主権と管轄権を行使し、南シナ海の領土の主権と関連する権益を確立した」と主張し、「仲裁裁判所の判断を受け入れない」と表明した。
さらに、中国は、「国内法及び国連海洋法条約等の国際法を根拠として、南シナ海の島々に主権を有する。これらの島々には、領海及び接続水域、さらに排他的経済水域の設定が可能であり、その上、大陸棚も有している」と主張した上で、「中国は、南シナ海に歴史的な権利を有する」と、改めて主張したのである。
一方の当事者だけでも判断は有効
しかし、「判断」が最初の部分で述べているように、一方の当事者が参加していなくても、「判断」は有効である。仲裁裁判所は、国際法の条文まで示して、「判断」の有効性を示している。中国にとっては、大変なダメージである。中国は、国際社会からの孤立は何としても避けなければならないが、南シナ海の権利を手放すこともできないからだ。
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