コラム

世界恐慌は絶対に来ない

2020年03月27日(金)11時12分

では、政治家でないエコノミストたちも大げさに動くのはなぜか。日本では特にそうだが、危機の時により悲観的な分析、あるいは悲観的に警鐘をならすことが、賢く、インテリに見える、カッコよく見える、こんなときに楽観論を言うと、間抜けで馬鹿に見えるから、ということが大きい。これは単なる主観的な感覚だが、かなり自信のある感覚である。彼らも別の意味で英雄になりたいのである。

もちろん、この機会に政府に財政出動大盤振る舞いをさせて、おこぼれにあずかりたい、というせこい悪いやつもいっぱいいるが、ある意味、こちらの方が合理的で、合理的に悪い奴らだ。国民も無責任な軽い悪いやつらで、将来の人々の財政不安を考えず、コロナがどうであれ、一人十万円もらえる、一世帯20〜30万もらえる、消費税が5%になる、そりゃあそのほうがいいよ、ということで、無駄に大規模な景気対策に賛成する。それに反対しようものなら、コロナショックで苦しんでいる中小企業の痛みを感じない、ポストに守られた大学教授は嫌な奴だ、というような批判が例えば私に向けられる。

本当の問題はコロナではない

しかし、冷静に考えれば、景気は悪くなり、不況になるが、大恐慌にはならない。リーマン・ショックまでもならない。銀行は傷んでないからであり、コロナショックは大きいが一時的だからだ。

株価が暴落したのはそれまで高すぎた、バブルだったからで、コロナショックはきっかけに過ぎず原因ではない。今株価が急激に上がったのは、次のバブルがバブル的な金融緩和、財政出動によって作られつつあるからである。景気が悪くなるのは、いままで良すぎただけである。経済の構造問題、地方と東京の格差、個々人の所得格差、教育機会、就業機会格差に目をつぶり、景気を力任せに良くして問題を覆い隠してごまかしてきたツケが出ただけで、普通に不況になっただけだ。コロナショックが終わっても景気は元に戻らないが、必要なのは、景気もバブルにすることではなく、このコロナショックが理由で資金繰りが詰まったり、売り上げが一時的に急減して倒産してしまう企業を直接救うことであり、失業者が生じてしまったら、彼らに手当をして、また教育、職業訓練投資を援助して、人々の仕事の能力を向上させることである。

大恐慌になる、というのは、ただの煽りであり、決して信じてはいけない。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 8
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 9
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 10
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story